八甲田山 特別愛蔵版 [DVD]
「物事は俯瞰で見ること」、「大局的に見ること」とはよく言ったものだが、実際に自分が現場の当事者や一員になってみるとなかなか難しい。しかし、ここでは物語を「神の視点」で見ることが出来るので、随所で「そこは違うだろう!」、「ああ、引き返せと言うのに!」と突っ込み所満載である。
この物語はよく企業のリーダー論に比喩されるが、確かに現場のリーダーの采配で、2つのグループの運命が分かれてしまったことは否めない。しかし、ここで頭の片隅に置いて頂きたいのは、この時代はまだ武家社会の価値観が色濃く残っていたということである。村人の反対を押しきって出発したが、途中で間違いであることに気が付いた→しかしおめおめと引き返したでは恥をかく。武家社会においては「恥をかくこと」=「死に値すること」であり、最も忌み嫌われた。この価値観が、当時のリーダーたちの根底に根付いていたのではないか。とすると、現代人の感覚で当時のリーダーたちの資質を単純に色分けして終わるだけでは、この物語の心髄にはまだ触れていないと思う。
その時代の価値観(常識)に囚われず、もっと大きな視点(それこそ神の視点)で、人間とは何か?自然と共存することの意味は?と読み解いていくと、この物語が示唆するところの教訓(真理)に気付かされるだろう。
孤高の人〈下〉 (新潮文庫)
加藤文太郎は槍ヶ岳の北鎌尾根で遭難して死亡します
登山家の宿命でしょうか
悲しい最後ですね
私も毎月山に登っています
低山ばかりですが夢はヒマラヤです
およそ山に登るものの最終目的はヒマラヤです
加藤文太郎は志半ばで逝きました
彼の心を継ぐのは我々です
八甲田山死の彷徨 (新潮文庫)
東日本大震災から3ヶ月が過ぎた頃、TBSの報道特集という番組が「遅々として進まない復興対策」を特集した際に、VTRにて阪神淡路大震災のときの対策担当大臣だった小里貞利氏が当時を振り返る場面があり、「竹下さん(竹下登元首相)から読めと薦められた本」として出てきたのが本書でした。
本書は、雪山行軍という過酷な状況下(=非常時下)において生死を分けた2人の隊長(=責任者)の違いを、置かれた立場、権限、対応の違い等を対比しつつ、物語化したものです。
本書を読むと、非常時においては、場合によっては(これまでの慣例・ルールに縛られない)超法規的措置をとる権限(および責任)を責任者に与えることの重要性と、その責任者はしがらみに囚われない行動力を持った人物であることが要求されることを痛感させられます。
このことから、本書は責任者になりうる全ての方に読んでいただきたいと思いました。と同時に、今の菅政権が過去から何も学び取っていないどころか、本書に出てくる不甲斐無い上官と重なり、このような政権を生み出してしまった有権者の一人として恥ずかしくなりました。とても勉強になる一冊です。
劔岳 点の記 メモリアル・エディション [DVD]
剣岳、日本の名峰の一つ。かつて地図を作るべくプロとしてこの山に挑んだ男達がいた。新田次郎原作なので、華麗さでなく、人間の真剣さを求める作品。撮影陣も現代装備で、(といっても人力なのは変わらないが)険しい山に挑んで映像作品として仕上げた。
自然と人間をみなおしていこうよ、というメッセージを秘めた、美しい風景映像、まさに命がけで撮影した文学映像として楽しみたい。
筋書きは、自然と人間の接点を時代時代にどうとっていくのか、という所だろうか。
雪の八甲田の怖さを甘くみた当時の軍上層部が、現場にどんな指示をしたのかも推測しつつ、仕事を淡々とこなす地図屋の現場。
それを現代に映画とした撮影陣もプロ。
日本の自然は壮大で美しく、そして時として牙を剥く。
甘くみてはいけない。ただ自分の足で、近づける範囲で楽しみたい。
なお、篤姫が庶民の妻を演じても、篤姫。そしてかわいい。
NHK少年ドラマシリーズ つぶやき岩の秘密 [DVD]
軽自動車が360ccだった頃、道路は未舗装で、電柱は木製だった。校舎も木造で机も椅子も木でできていた。NHKの少年ドラマシリーズを観る度に、自分もいつかあの主人公のように、不思議なドラマの渦中に入り込むのではないかと可愛い夢想に浸っていた。まだ,妄想や現実逃避という言葉を知らない年代で・・・。この作品をノスタルジーで語るのは卑怯かもしれないが、昭和という時代の記憶を確実に呼び覚ますことは確かだ。原作が持つジュブナイル性(?)を見事に昇華し、子供と少年、青年の狭間にある青臭い純粋さを描き出している。映像や音声は現代作品のようにはいかないが、あの当時のテレビで見ていたよりはずっと綺麗に思うし、作品内容を壊すほどのものではない。フィルム作品であるが故に奇跡のように残っていてくれた名作。テーマソングと共に、静かに浸るが如く鑑賞するべし。P.S.今回見直してみて、先生役の菊容子さんにはベッピンという言葉がよく似合うと感じた。