テイク・ファイヴ
私はブルーベックは嫌いで、ポールデスモンドのファンで、ブルーベックカルテットもデスモンドを聴きたいがためにピアノを我慢して聴きます。MJQにデスモンドが客演したライブCD(JK57337)がすばらしかったので、本CDも同様なのりを期待して購入したのですが、全くの期待外れでした。ヴォーカルにサックスが絡むのはごく普通で、すばらしい効果を狙えるのに、デスモンドが絡んでいるのはタイトル曲のTAKE FIVEだけ。出だしはドラムのシンバル(例のドラムソロの時のシンバル)が最初から冴えて期待を持たせるのだが、デスモンドはちょっと絡むだけ。基本的にデスモンドのパートをすべてカーメンが歌ってデスモンドの出番が皆無なのです。デスモンドがその場に構えていて、例のTAKE FIVEの出だしのリズムを奏でないなんて考えられない。それにしても、なんともったいないことか。こんなアレンジをしたデスモンドは一体何を考えていたのか、まだ生きてる本人に聞きてみたい。ちなみにこの歌詞できくTAKE FIVE(私は英語の歌がそのまま理解できるので)は、サックスで奏でる原曲とはずいぶん異なる印象を持ちました。
ただし、デスモンド抜きのブルーベックトリオとマクレエの録音だと思えば決して悪くない。音質も61年の録音としてはすばらしい。4つ星はその観点からの評価です。マクレエもその頃から声、歌い方は晩年まで、全く変わっていないのには驚いきました。同じNYでのステージでは非常に暗かった晩年に比べて、若い分、多少の元気さを感じる程度である。ブルーベックのピアノが無骨なだけでなく、この当時からボーカルに伴奏する場合は優しく弾けることも判りました。
しかしながら同年のヴァンガードでのビルエヴァンストリオの時と同様、観客はうるさく、ろくに聞いていません。当時のエヴァンスとは比較にならないくらい人気絶頂だったブルーベックカルテットでも同様なのには驚いてしまいました。
タイム・アウト
ブルーベックといえばテーク・ファイブ、テーク・ファイブといえばブルーベックだが、「テーク・ファイブ」の作曲者はアルト・サックスの名手ポール・デスモンド。このアルバムのテーク・ファイブでも、ブルーベックのピアノよりデスモンドのサックスを聴くべきだ。くぐもった暖かい音色がデスモンドの身上。テクニック、ジャズの心に溢れた名手なのだが、実態以上に低く評価されているのが残念。デスモンドのサックスに耳を澄まそう。(松本敏之)
Time Out
インストゥルメンタル・ジャズとしては珍しくミリオンセラーとなったTake Fiveを収録したこのアルバムは、5/4拍子のTake Fiveをはじめ、9/8拍子のBlue Rondo a la Turk、4/4と3/4が混同するKathy's WaltzやThree to Get Readyなど、聴いているだけでテンテコマイになってしまう内容が何度聴いても飽きません。(個人的にBlue Rondo a la Turkのテーマ部分は単純に4/3拍子であると結論付けました。ピアノは1拍3連でベースは1小節中最初の2拍を3連符で、3拍目は4部音符であるとすると数えやすいです。)
このような拍のとり方をバラエティに富んだ手法で取り入れた本作は「Time Out」というタイトルで、直訳すれば「時間切れです」が、固定的であった4/4や3/4拍子という「時間からの開放」という意味もあるのではないかと思います。
でもそういった理屈ぬきに聴いていて楽しいですし、デイブ・ブルーベックさんのメロディーメーカーとしての素晴らしさにただただ感動するばかりですし、デスモンドさんの優しいサックスの音色や、バンド全体の雰囲気を大切にするモレロさんのドラミングなど、どれをとっても最高のジャズアルバムで歴史に残る名盤であって当然だと思います。