ジェノサイド
おおむね良作でした。台詞回しはちょっと少年ジャンプ的な臭さで
厳しいものがありましたが。
以下注意。ネタバレになるかも知れません。
気になる点1点目。
他のレビューでも書かれていますが、作者の歴史観。
日本人傭兵の描写に関しては特に違和感を感じませんでした。イエーガーは
ミックを殺した後に「一同を危機から救ったミックに、汚れ役を押し付けて
申し訳なかった」と反省し泣いています。戦争狂ではなく、適切な仕事を
こなしただけであった、と。
しかし南京事件などに関しては、今日まで流通してきた情報が多分に
プロパガンダを含んだもので非常に疑義があるもの、と明らかになって
きています。物語を語る上での必然性もなく、この辺の事情に詳しい読者には
違和感だけを残しています。
2点目。2人目の進化者が現れた時点で「あれ?主人公がこんなに苦労する必要は
なかったのでは?」と思います。例えば日本の進化者が主人公の父をもっと直接
支援したりできたはずです。まあそれをすると物語にならないわけですが…。
サプライズを狙い過ぎて(確かにサプライズではありましたが)破綻してしまった
感があります。
3点目。医療現場でのリアリティのなさ。謝辞を見るとなるほど臨床医への
取材が足りてなかったように思います。一定のスピードで進行する疾患であっても
「あと○時間」なんて正確に死亡日時を推定することは不可能です。また
死亡30分前ともなると低酸素による臓器障害が重篤な状態であり肺だけが改善
しても結局死亡は免れないでしょう。「退院の手続きをすれば薬が飲める」と
いうのも非現実的。ここは両親を説得して投与を強行する、という描写の方が
現実的だろうなと思いました。低酸素で死亡寸前なわけですから、本文では
描写がありませんが気管内挿管は当然されていると考えられます。となると
経鼻的に吉原ないし看護師が直接手を下して投与するしかないわけです。
(両親に薬だけ渡して「勝手に飲ませて下さい、僕らは倫理的に投与できません」
ってわけにはいかない)
医師としてはかなり違和感がありました。
幽霊人命救助隊 (文春文庫)
友人に進められて読み始めました。
最初は話の設定に「これでいいのか??」とは思いましたが
読んでみると、なるほどこれでいいのだと思いました。
内容の重さに設定がごちゃごちゃすれば読み手の理解が遅くなってしまいますし
映像ではない小説は主人公の不自由さを伝えるのに手間取ってしまいますから設定は軽く、そして人に突っ込みを入れられるぐらいの方が解りやすいのだと思えました。
そして一番大きかった事が話の内容を含め神様が人をたいして助けない事です。
「49日で100人の自殺志願者を救え」なんだそれは!と抗議したくなる事を言う神様
せっかく与えた命を粗末にしおって、と呆れる神様
あぁ、この神様は親であり先生であり上司なのだと思いました。
助けてやりたいが自分自身の問題に私が首を突っ込むわけにも行かないが、かといってほおって置くわけにもいかないそんな中で"自分で見つけて来い"と後ろから4人の尻を叩いた。
そんなふうに思いました
親近感をもてる神様は私の神様像と近かったんです。
それぞれの死に方、時代は読んでいて飽きがきませんでした。20代の私には解らない言葉が飛び交う場面は笑えます。
時代の違いはこんなにも人の思考を変えるのかとも感心できます。
読み手を選んでしまうかもしれませんがぜひ読んで欲しい一冊です。
13階段 (講談社文庫)
時間が経つのを忘れて夢中に読んでしまった。推理小説の中に盛り込まれる「死刑制度」や「死刑囚の冤罪」といった社会性の高いテーマが、この小説に理知的な重厚さを加えている。複雑な人間関係と時間の糸が最後には一本の糸に絡んでいく。ここに推理小説の醍醐味を感じた。
あとウィットに富んだ会話は、イギリス人ぽくて、日本人がこんな会話しないよなーとぶーぶー言いつつ、日本人にこの茶目っけがあればと勉強になった。
絶賛できないところが一つあるとすれば真新しさに欠けた点。
被告人が記憶を忘れてしまい、10年前の殺人事件の捜査にスポットがあてられているあたりが『レベル7』ぽさを感じ、『ショーシャンクの空に』を彷彿とさせるような獄中の描写や展開があった。そういう意味では真新しさはない。
とにかく時間を忘れて小説を楽しみたいときにはお薦めです。
6時間後に君は死ぬ [DVD]
作品は二部構成になっていて、前半がタイトルにもなっている「6時間後に君は死ぬ」で、後半が「3時間後に僕は死ぬ」である。リアル感の欠如を指摘する人もいるが、死の予知能力がストーリーを動かす原動力になっているのだから、上手にだまされて、エンターテイメントと割り切って楽しむ作品だと思う。
前半は視聴者に犯人はそいつだと引き付けておきながら最後にどんでん返し。後半は何が死を招くのか謎のままラストに突入する。最後はハッピーエンドで、めでたしめでたし。アンガールズの田中がストーカー役で出演しているが、はまりすぎて笑ってしまう。
13階段 [DVD]
GTO反町が今までの殻を脱ぎ捨て、寡黙な男に挑戦した作品です。
彼にはそんな一面もあったのかと思い、正直驚かされました!!
製作発表の記者会見では、同昨主演の山崎努が、
「反町君の新たな一面を見ることになるだろう。
いや、本当はこれが彼の奥底にあるものなのかもしれない。」
というようなことを言っていましたが、確かにその通りでした。
彼が演じる役は、全篇を通して必要なこと以外はほとんど語ることなく、
しかし、ラストでの彼の告白に心を揺さぶられる人は少なくないでしょう。
脇を固める役者陣も素晴らしく、山崎努は、消すことが出来ない心の傷を抱えた看守役を
渾身の演技で表現しています。他にも、大杉連・笑福亭鶴瓶・大滝秀治などの出演者が
作品に厚みを持たせています。