永久保存版 はやぶさの軌跡 NHKとJAXAの貴重なビジュアル250点収録! (別冊宝島) (別冊宝島 1739 スタディー)
これまでに発行されてきた「はやぶさ」関連・取材本の中でも、「集大成」的位置づけにしてよいと思う一冊。
副題に「貴重なビジュアル250点収録」とあるように、「はやぶさ」や「イトカワ」の写真・図解が豊富に使われていて、単に文章の羅列に止まらない分、楽しめた。
何より、これまでの「日本の宇宙開発の歴史」を紐解き、歴代の衛星・探査機を網羅しながら「はやぶさ」の功績に至るまでの道のりを解説している部分は、とても興味深い。
そういう点からも、「はやぶさ」をきっかけに(宇宙)に興味を持った子供が読んでも良い内容に仕上がっていると感じた。
ただし、文中に漢字が多用されているため、対象になり得るのは小学校高学年からと思われる。
付録の「はやぶさ」ペーパークラフトについては、JAXA・坂本教授の設計ということもあってか、思ってたよりも緻密な作りで、(こういう模型作りが好きな人なら)作り甲斐があるかもしれない。
もっともそこはやはり素材が「ペーパー」だけに、リアル感に乏しいのは否めないが、たとえば「太陽電池パドル」を折り畳めたり、「サンプラーホーン」の伸縮ができる等、現物に近い動作が出来るようになっている点は面白かった。
内容全体を通しての読み応えは充分あると思うので、「はやぶさ」に限らず「日本の宇宙開発の歴史」にも興味がある人は、買って損は無いと思う。
【追記】
最終章(第5章)に載っていた「はやぶさ君のひとりごと」
事実に即した内容ばかりと思いきや、最後にまさかそういう「遊び心(?)」があろうとは思いもよらず、正直驚いた。
とはいえ、これが個人的には思わぬツボだったので、どうせなら最終章だけでなく、「誕生」から「危機を乗り越える過程」での「ひとりごと」もあれば、物語の起承転結としてまとめられた分、良かったかもしれない。
はやぶさ ハンドタオル:「タダイマ ミンナ アリガトウ」
ハンドタオルというより、ハンカチという感じで、持って歩き、皆に見せるのにちょうどいい。
写真の右下、JAXAのロゴマークのところに、ハヤブサくんが最後までがんばった証拠がきちんと出ている。
本当に、最後の最後までデータを送り続け、そこで途切れたしるし。
見るたびに、けなげなハヤブサくんを思い出し、泣けます。
もったいなくて、まだ使わずにいます。
小惑星探査機 はやぶさの大冒険
小惑星探査機「はやぶさ」が打ち上げられてから地球に戻ってくるまでの冒険を描いています。はやぶさに襲いかかる、予想を越える試練の数々に対して、知恵を振り絞ってミッションをクリアした、日本のはやぶさのチームの執念の物語です。著者の山根氏が、打ち上げから帰還まで7年の間、はやぶさチームに張り付いて取材を続けてきた、膨大な資料がもとになっており、山根氏の執念の賜物でもあります。
インタビューで開発担当者から聞き出した秘話がたくさん盛り込まれており、ハイテクとローテクの両輪によって「はやぶさ」が支えられ、幾多の困難を乗り越えてきたことがわかりました。特に、開発担当者のヒラメキと日本を支える企業群の持つ底力によって、磨き上げられて絶妙に組み合わされたローテクの数々がとても興味深く感じました。NASAにおいて開発費が25億円を超えてしまい断念した、低重力の小惑星上で活動する小型ロボットをわずか3000万円で作ったそうです。残念ながら小惑星に到達することができませんでしたが・・。
世界トップの経済力を誇るよりも、あるいは世界をリードする政治力を誇るよりも、こんな不可能と思われることにチャレンジして道を切り開いた、凄腕のチームが日本に存在していることを素直に誇りに思います。またこのチームの存在を我々に知らしめてくれた著者の山根氏にも感謝します。
このチームがなぜここまで努力できたのか、中心となった技術者の「とてもおもしろかったから」という言葉が印象的です。結局、おもしろいから頑張れるんですよね。これからもどんどんとおもしろい目標を立てて、どんどんとチャレンジしていく日本でありたい、と思った次第です。結果や評価はあとから付いてきます。
「どうして世界一でなければいけないんですか。2位ではダメなんですか」などと言っていた国会議員には、このようなおもしろさは永久にわからないでしょうが・・。
はやぶさ、そうまでして君は〜生みの親がはじめて明かすプロジェクト秘話
科学の歴史的な快挙に直接関わった科学者がその内幕を「暴露」した読み物として思い浮かぶのは、ジェームズ・ワトソンの『二重らせん』です。この『はやぶさ、そうまでして君は』もプロジェクトマネジャー自身が語っているという点では『二重らせん』と同様な立場の物語(研究者の遊び心・上層部やNASAとの駆け引きの件もワクワクします)なのですが、この「はやぶさ」の物語には「暴露」という表現は似合いません。むしろ、ピグマリオン王が恋いこがれた女性の彫像を愛でているうちに、彫像に命が宿ったという伝説に近いという印象を受けました。
小惑星イトカワへの接近に際しては、遠隔操作ではなく、イトカワに投下したターゲットを目標にして「自ら行動できる」自律誘導航法を採用したと説明されています。しかし、そうした自律性だけでは説明のつかない「人知を超えた何かがある」と感じざるを得ないような不思議な力が「はやぶさ」にはそなわっていたと川口氏は語っています。ロボット機能をそなえた小惑星探査機であるはずの「はやぶさ」とプロジェクトチームが7年間つき合っている内に、神が「はやぶさ」に命を与えたのでしょうか?
「はやぶさ」の物語を読んだ後、私は職場でつまづきそうになった局面で「あきらめないぞ」と思い直した自分を見いだし、驚きました。この心意気は明らかに「はやぶさ」からもらったものです。この本は、そうした勇気を人に与えてくれる力をもっているようです。ありがとう、「はやぶさ」。