モンマルトルの夜をもう一度 [DVD]
繊細なタッチでアシストする彼(企画製作者のニルス・ラン・ボーギー)のピアノはもちろんのこと、映像の構成、音へのこだわり、なによりも人々への優しい眼差しがいきている。
育ててくれた音楽を、自身で受け止め、次代に受け継ぐという主題が明確に表現されたドキュメンタリー作品。映像表現者としての力も見事なものだ。
三人の大ベテランを囲む人間模様に心うたれる。「人間っていいなあ〜生きてるっていいなあ〜」と実感させられる。この中では最年少だが、すばらしい歌唱力で圧倒するリサ・ニルソン。「失敗したっていいのよ、またやり直せばいいのよ」と語る彼女の言葉も心に残る。
観終わった後、サウンドトラック盤CDに手が伸びる。ライブの臨場感をいかしつつ、細部の音処理が見事で、ここにも企画者のセンスと力量を感じさせる。
In New Orleans [DVD] [Import]
このDVDは2001年のリリースであるが、収録は1988年以前のものである。(同じ内容のビデオもその時期にリリースされている)
その時ですでに60歳後半(1922年生)で「爺ちゃん」ぶりを披露しているのであるが、老いても益々盛んなのだ。83歳の御歳であるにも関わらず、つい先日も大阪にてライブ公演を行っているのだから素晴らしい。
そして、この10年以上前のライブも演奏自体は古さを全く感じさせない。磨きのかかった今の爺ちゃんぶりを知るものからすれば、「若さ」を感じたりもするのだが、何故に今でも鑑賞に堪えうるのかと言えば、それが「ジャズ」であり、リーダーが「トゥーツ爺」であるからだ。
彼のギターや口笛、そしてハープは勿論であるが、その音の表裏に浮かぶ彼の笑顔を存分に楽しんでもらいたい。そうすれば、街中で耳にする彼のサウンドに呼応するかのように、あの白いヒゲとメガネに飾られた笑顔が浮かんでくるだろう。
Affinity
初めて聴いたときは一聴して売って、Evansの
エレピの格好良さに開眼して買い直しました。
これだけ評価の変わった盤も珍しい。
ThielemansもSchneiderも良いですが、70年
以降のEvansのピアノの鳴らし方が素晴しい。
練れて美しく哀感がこもって、えも言われぬ
心地よさを運んでくれます、ダンディズム。
Johnsonとの相性も抜群ですね。
60年代のレモンの様な荒削りなリリシズム、
先鋭性も良いですが、こちらもまた素晴しい。
色々なトリオの良さも、年代毎に変わるピアノの
音色もEvansの魅力です。この頃までとか限定しないで、
EvansのJazzの小径を色々散策してみて下さい。
固定観念を払拭して聴き込めば、良い盤ばかりです。
Chez Toots
ハーモニカと口笛の名手トゥーツ・シールマンスが、
カフェでスタジオで豪華ゲストを招いて録音しています。
各曲毎にメンバーが代わっているのですが、
アルバム全体の一貫性はちゃんと保たれています。
ヨーロピアンテイストあふれた‘おしゃれな’作品です。
Shirley Horn 、Diana Krall、Johnny Mathis に Dianne Reeves。
それにしてもゲストがすごい。
ほかにもいろいろ見所はあるのですが、一曲あげるとしたら、
que reste-t'il de nos amours でしょうか。
この曲冒頭のコーラス6重奏はとても心地良いです。正に夢見心地です。
Brasil Project
トゥーツシールマンスの作品を全部聴いている訳ではないのですが、この2作がひょっとして彼のベストパフォーマンスなのではないかと思わせる説得力溢れるプロジェクト。両方ともイヴァンリンスでスタートするところが良いですね。イヴァンの訴求力と世界観にトゥーツがうまく乗っかっている。そうジャヴァン、ドリィカイミ、ジョアンボスコ、ジルベルトジル、ルイスボンファ、カエターノ達の世界観にうまくすいすい乗って気持ち良さそうにハーモニカのソロを軽くあてていく。そこにセンスが感じられるし、ブラジルプロジェクトというタイトル通りのブラジル音楽の参考書のような作品になっている。たとえばカエターノと言ってもそれって誰?と思う人が聴いて何かを感じればそれでいいと思いますね。全部気持ちよい音楽なのでこれが売れればブラジルファンが増えるものね。