向田邦子の手料理 (講談社のお料理BOOK)
どのメニューもおいしいです。私はほとんど作りました~。
随分前?の料理本なのに古さを感じさせません。実は1冊目ボロボロに
なってしまったので我が家の本は2冊目です。
お酒の肴あり、炊き込みごはんあり、向田さん好みの和食器あり・・・。
メニューは大人味(クセのある野菜や酒の肴)なので子供さんや
若いダンナ様には不人気かもしれません。舌の肥えたグルメさん用ですね
(向田さんの妹さんが以前開いてらした大人の居酒屋っぽいお食事処で
出されていたメニューがほとんどです)。
味付けなどは事細かに掲載されていません。だから作り手もある程度
経験があったほうが良いと思います。
ほんとうにおいしいんですよ。私のベスト10に入ります。
あ・うん [VHS]
テレビドラマ化が2回(NHKとTBS)、映画化が1回されているが、NHKで放映された本作はテレビドラマ史に残る傑作中の傑作(第一シリーズと第二シリーズで合計9話)。
主役は水田仙吉役のフランキー堺さんと門倉修造役の杉浦直樹さんなのだが、強く印象に残るは仙吉の妻・たみ役の吉村実子さんとその娘・君子役の岸本加代子さん。
一時半ば引退同然だったが吉村さんは本作で本格復帰。特別に美人でもない、ごく平凡な主婦が、夫の親友で、押し出しも立派な何不自由ない男性に思いを寄せられ、揺れ動く女心を巧みに表現している。また、岸本さんが昭和初期の庶民的な家庭の日常に見事にとけこんでいる。
父の詫び状 <新装版> (文春文庫)
普遍の生活のふとした違和感を文章にし、この本では記憶をたどり家族を描くことで人生への教訓が詰め込まれている。この本を読み終えた瞬間の気持ちはどの本も味合わせることができないと思う。嫌な部分がなく、皮肉めいたことも言える「向田邦子」がつまっている作品だ。へたな文だが向田さんへの尊敬の念が通じれば幸いである。
あ・うん [DVD]
向田邦子原作。隆旗康男監督。
昭和初期のきなくさい軍国主義が押し寄せる前の、つかの間の平和を謳歌する東京・山の手を舞台に、男の友情を軸にした二つの家族模様を描く人情ドラマ。
軍需景気の恩恵を受け、羽振りのいい中小企業の社長であり兄貴肌の門倉(高倉健)と、まじめ一筋の転勤族水田(板東英二)の子供のように無邪気な関係にしみじみ、水田の妻たみ(富司純子)の愛らしさがほっこりさせる。
募るたみへの想いを胸に秘めつつ、水田と家族ぐるみを続けるが、募る想いがやがて水田と絶交という最悪の選択でけじめをつけようとしてしまう。徹底的に避ける日々。その不器用さがもどかしい。
家族ぐるみの付き合いといっても、全てを開襟しているわけではない。「一番大事なことは人には話せない」。その歯止めがあるからこそ、徹底的に付き合える。その禁を破った時、関係はあっけなく崩れ去る。
物語は、最終的に仲直りし、ハッピーエンドを迎える。しかし、本当にそうだろうか。門倉のたみへの想いはおそらく変わらないだろうし、たみもそうだろう。この奇妙な三角関係は振り出しに戻っただけである。
そして、時代は本格的に戦争の道をひた走る。軍需景気の恩恵を受ける門倉も、ジャワ等海外進出していく会社勤めの水田も、苦難の時代を歩んでいくだろうことは想像に難くない。娘さと子の愛した青年もおそらく戦死だろう。
その意味で、これはつかの間の平和な時間に起きたドラマなのである。彼らには今後おそらく大きな悲劇が待ち受けている。だからこそ、何とも言えない悲しい気持ちがすぐ傍に横たわっているのだ。
戦争を知る向田だからこそ描ける、不穏な時代に一瞬輝いた閃光のような輝きを放っている。久しぶりに映画で涙した。
思い出トランプ (新潮文庫)
昨年、20年ぶりにこの作品を読み返しました。鮮明に記憶に残っていたのは、‘大根の月’。
当時、TVで萬田久子さんが主人公を演じて、強烈なインパクトがありました。以来、包丁を持つのが恐かったりしました。
今回感じたのは、向田作品は、読み終わっても完結していない。。。
クライマックスに、‘うっ’というような衝撃があり、それを最後まで持ち越さず、余韻を残しつつも、
これから先は。。。と読者に想像力を働かせる。向田邦子という作家の力量を、存分と堪能できる一冊だと思います。