伊坂幸太郎選 スペシャル・ブレンド・ミステリー 謎005 (講談社文庫)
「謎」シリーズの第5弾だが、これまで謎解きミステリらしいアンソロジーと感じた事はなく、期待外れの物が続いていた。今回のブレンダーの伊坂氏に期待したが...。
陳舜臣氏「長い話」は、単にあるエピソードを綴っただけでミステリとは思えない。今邑彩氏「盗まれて」も底が浅過ぎて、謎の気配が感じられない。泡坂妻夫氏「飯鉢山山腹」は亜愛一郎もの。ユーモアたっぷりの記述とトリックの組み合わせの妙が光る。大トリックではないのに読者を煙に巻く手腕は流石と言える。夏樹静子氏「パスポートの秘密」は平凡な構想で、話の発端から結末まで偶然とヒロインの想像だけで成り立っている心許ない作品。真保裕一氏「私に向かない職業」は、題名もパロディ、内容もハードボイルドのパロディだが、トボケタ味で中々読ませる。鈴木輝一郎氏「めんどうみてあげるね」は、良くあるテーマとも言えるが、語り口の上手さで無難な出来か。連城三紀彦氏「夜の二乗」は既読だったが改めて感心した。男女の心理の翳の描写、着想外のトリック、巧妙なプロットの三拍子揃った秀作。本作レベルの短編を揃えて貰えれば購入した甲斐があると言うものだが...。小松左京氏「長い部屋」は、専門のSF的手法をユーモア・ハードボイルドと融合させたものだが、脱力感しか覚えさせない内容。
「夜の二乗」を除くと、読み応えのあるミステリ・アンソロジーとは到底思えなかった。この辺で企画を見直しても良い時期なのではないか。
棚の隅 [DVD]
丁寧なドラマでした。
8年前に幼子を残し出て行った前妻と再会します。
互いに人生の岐路を迎えています。
・前妻との再開
・おもちゃやから次ぎの仕事への踏ん切り
・前妻の結婚
新しい人生に踏み出すために、忘れられない過去としっかり決着をつけていく という話なのですが、
たんたんと進んでいくんです。特に大きな展開や仕掛けもなく、丁寧に丁寧に、、、、。
渡辺真起子さんの演技がすばらしく、ついつい最後まで見てしまいました。
映像は低予算映画らしく、昼のドラマのようにちゃちいところ満載ですが、
渡辺さんのしぐさや表情がこの映画全体に安心感を与えてくれています。
また、内田量子さんもほとんど不機嫌そうにしているのですが、子供と手をつなぐシーンの笑顔は
最高です。このシーンの為にこれまでの演技を伏線にしていると思わせます。
個人的には、設定をもう少し過去の時代にしてほしかった。おもちゃやの寂れ感がやや弱いので。
また、シーンに合わせた音楽をもう少しつけてもらえると、もっと楽に見続けられると思いました。
少女 [DVD]
少女というタイトルに惹かれ、何かで見た「ねえ、おじさんSEXしない?」
のキャッチで、購入決定!しかし、見始めると不純な気持ちが消えていきました。のどかなオープニングから、どんどんと違う世界に引き込まれました。
小沢 まゆ(新人)が、何歳かわかりませんが15歳の中学生役というのは、ちときびしかったのでは?小路 晃、室田 日出男、夏木 まりという脇が素晴らしい。他にも、こんなところにあの人が!というのが多数あります。
映像・音声特典も多数あり、何度も楽しめました。
戻り川心中 (光文社文庫)
『恋文』などが最近だと有名で、もしかしたら恋愛小説の作家さんというイメージが強いかも知れません。多分ですが。
でもこの作家さん、日本を代表する超一級ミステリ作家さんなのです。
元々、伝説のミステリ誌『幻影城』でデビューなさってますし。
で、日本ミステリ史上に輝く金字塔である、代表作がこちら。
先述した事と矛盾するようですが、ミステリとか何とかを軽く超えて、文学作品として大変な高水準であると思います。
ミステリのファンでも、そうでなくても、小説読みの方に是非お勧めしたい傑作。
「花」にまつわる、耽美的で、詩情、叙情性溢れる名編が詰まってます。
勿論、ミステリとしてハイパー。論理が背後であまねく支配しています。
で、小説として面白いんですこれが。
嗚呼、素晴らしき大正浪漫。
恋文 (新潮文庫)
本当にドラマティックなことって、
普通の人の普通の生活の中にあるのかもしれない。
本当に愛するって、相手を自由にする勇気なのかもしれない。
そんなことに気づかされながら、
最後の最後まで結末がどうなるか読めないストーリーの展開。
そうきたか・・・と、短編5つで5回、
連城さんにしてやられた気分させられる、
ぜひぜひ読んでもらいたい一冊です。
今まで読んだ短編集の中で私は一番好きです。