前へ!―東日本大震災と戦った無名戦士たちの記録
著者の麻生幾といえば、「外事警察」、「宣戦布告」等の小説でおなじみだが、今回は彼の
緻密な取材を元に描き上げたドキュメンタリーである。
本書は大きく3部構成となる。
1部:福島原発に立ち向かった自衛隊、消防、警察のドキュメントと、未だに続く自衛隊の決死の覚悟。
2部:完全に崩壊した、道路を復旧させるための国土交通相の奮闘
3部:震災発生直後から、活動を知られることなく、奮闘する高級官僚達。
マスコミは度々、官僚機構を批判するが、今回のドキュメントを読む限り、一度彼らが機能すれば
超越した能力を発揮する事ができる事がよくわかる。ただ、そういう能力をもった官僚を使いこなすのは
政治家であり、政治家が官僚を使いこなせなければ彼らも能力を発揮できない。
その例が、1部で紹介されている、当時経産大臣だった海江田大臣の指揮命令系統を無視した「暴走」と
3部で紹介された、内閣危機管理センターの総理専用室に「こもった」当時の菅首相だ。
この両名を批判することは簡単だが、待ってほしい。彼らを選んだのは誰だったのかと。
それを噛み締めていただきたい。また、1部に登場する東京電力だが、自衛隊から
「小学生のサッカー」と例えられるように、組織の柔軟性を失っている状態で動いていた
事に恐怖を覚えた。いずれも詳細は本書を読んでいただきたい。
日本人必読の書である。