大仏破壊 バーミアン遺跡はなぜ破壊されたか
タリバン政権により行われたバーミヤン遺跡の大仏破壊の内幕について、著者の綿密な取材と人的ネットワークにより書かれた一冊。前著「戦争広告代理店」に続くノンフィクション作品で、今回も国際情勢の内幕に焦点を合わせている。
本書ではタリバン政権とビンラディンの関係を軸に、いかにアフガニスタン政権が世界的に孤立し、最終的に大仏破壊という暴挙に及んだのかを、ニュース番組では語られることのないドキュメンタリー視点で著している。
前著同様、時間を忘れ一気に読めるオススメの一冊。
アフガニスタンの仏像は破壊されたのではない恥辱のあまり崩れ落ちたのだ
イランの映画監督、モフセン・マフマルバフの語り口は静かだ。そしてその眼差しも静かで優しい。テレビで見た、実際のマフマルバフ監督も穏やかな人物であった。とても逮捕され、長期間刑務所に抑留されていた人物には見えなかった。
しかしここで言う「静かな」というのは、主張が無いということを意味しているのではない。彼の主張はときに辛辣な批判に溢れている。そしてなすすべも無い現実を目の前にした時の無力感と悲しみは、この上なく熱く深い。
しかしマフマルバフはこの熱い感情論でもってアフガニスタンを語っているのではない。アナリストのような冷静さでもって、経済的その他指標・数字でもって淡々と自らの隣国について語っていくのだ。ヒステリックな議論は彼の望むところではなく、金塊り声を上げることによる逆効果を恐れているように見える。それは冷静な、静かな、そしておそらくは正しい視点なのであろう。