Definitive Collection
1960年代から70年代のポップス・シーンを俯瞰した時に、ディオンヌ・ワーウィックとバート・バカラックの幸せな出会いがなければ、世界のヒット・チャートはもっと貧弱になっていたと思います。二人のコラボレーションは、当時のポップス・シーンをまさしくリードしていました。
「ウォーク・オン・バイ」「アルフィー」「小さな願い」「サン・ホセへの道」「恋よ、さようなら」「愛の面影」など、稀代のメロディ・メイカーであったバカラックが作ったこれらの数々のヒット曲を彼女の歌で聴くと洋楽全盛期だった頃を思い出します。まさしく膨大な“スタンダード・ナンバー”が次から次へと流れてくるようです。
ラストに収録された「愛のハーモニー」のメンバーの凄さにあらためて驚かされます。エルトン・ジョン、グラディス・ナイト、スティーヴィー・ワンダー、世界の頂点が彼女の元に集合したというわけですね。
ポップス界を席巻した女性シンガーの存在は、我々にポップスの素晴らしさを伝えてくれました。1969年の世界的大ヒット曲「恋よ、さようなら」の♪I'LL NEVER FALL IN LOVE AGAIN♪は当時の日本人の多くがこのフレーズを口ずさめることから、いかにヒットして親しまれたかが分かると思います。
もう今やこのような洋楽のヒット曲が日本で親しまれることも少なくなりましたが、海の向こうの洋楽を皆で共有できたというのは幸せな時代だったのかもしれません。
バカラック・ベスト~生誕80年記念スペシャル
60年代以降ロックが隆盛になるなかでは、50年代に頂点を極めた、ボサノヴァ、オーケストラ・アレンジを取り入れたバカラックのアメリカン・ポップスは異端の身に甘んじました。でも、それだけにバカラックの跡を継ぐ後輩がいないので、バカラックに替わる存在は今もいません。そういう意味では、ほかのCDと多少の曲目の重複はあっても、バカラックのCDは、何種類買っても、むだには思いません。
歌詞・対訳は完備。
ただし、現在のバカラックによるライヴ感のあるベストをご希望なら、二枚組ライヴ盤Live at the Sydney Opera Houseのほうがあります。