一澤信三郎帆布物語 (朝日新書)
昔の一澤帆布のトートバッグを2つ持っている。この七年間使い続けてきたが その強靱さには脱帽している。タフな使い方でも形は崩れないし 汚れても洗える。インドネシアに転勤した後も 当地で大活躍中だ。それだけにお家騒動は悲しかったし 信三郎の勝訴には溜飲が下がったものだ。
本書を読んでいて感じた点は二点である。
まず京都という街の「強さ」について。信三郎が困難に陥った際に 京都の周りの人々が暖かく手を差し伸べた風景が感動的に描かれている。一体 京都というと 料理やお菓子等に見られる繊細なイメージも個人的には強かったが 実は 正に 一澤帆布のトートバッグ並みの「強さ」があることが良く分かった。伝統を守る職人仕事への支持という面ではおそらく日本でも一番「強い」街なのかもしれない。この京都の強さというテーマが 本書の通奏低音だ。
次に「伝統を守る」という点について。「変化」「チェンジ」という言葉がキーワードになっている最近の風潮の中で「伝統を守る」という言葉にはネガティブな響きがある。「守旧」というような言葉はむしろ非難の言葉ではないだろうか。その中で「伝統を守る職人仕事」をやっていくことの価値が底光りしているような気がした。
実際 これからの信三郎帆布に大量生産を期待する人などはいないだろう。手仕事で丁寧な職人仕事を引き続き続けてほしいと思う人の方が多いと思う。それはそれで 一つのコアバリューなのだ。
敗訴した長男が理解しなかったのは 上記2点に尽きると思う。長男自身は 一澤帆布をビジネスとして伸ばそうとは思っていたのに違いない。但し 手法と精神において 大きな誤解があったということなのだと思う。本書に長男の意見が出てきていない分 想像の範囲には過ぎないのだが(また それが本書を若干平板にしてしまっているが) 読後感の一つとして 僕は そう考えている。
ハローキティ 一澤信三郎帆布横型トートバッグ
サンリオとのコラボでキティちゃん生地で作った一澤信三郎帆布
カラフルな色合いだが実際は艶消しなので派手過ぎない
オリジナルと比較するとキティというだけで倍の価格設定は割高に感じる。
固く丈夫そうな生地なので習い事で重い本やノートPCを入れて運ぶのに向いているがサイズ足りないか。
直接注文だと送料や日数、手間がかかるので話題の信三郎帆布を一度使ってみたいという人には向いているでしょう。
シゲコ!—ヒロシマから海をわたって
広島で被爆された笹森恵子さんの半生が書かれた本です。当時の貴重な写真も掲載されています。著者の菅聖子さんの、取材される方に対しての優しい眼差しが表れていると思いました。カテゴリーは児童書ですが世代に関係なくじっくり読める中身の濃い本だと思います。先日、テレビで笹森さんを拝見しましたが目に力強い光が灯っている方だと感じました。ご高齢ではありますが戦争のない平和な世界を目指し世界中を求めに応じて精力的に講演にまわっていらっしゃるのはすごいことだと思います。
カバンの達人
前著「鞄が欲しい」が楽しい(読んでいて楽しい)本だったのに、今回はそうでもない。僕にとっては「鞄が欲しい」の中のつまんなかった箇所を取り出した感じに見える。
ドクターKとか変に謎めかしている人については結局人となりが伝わってこない(知っている人が読めば面白がるかも知れませんが、それでは世に出す意味がない)。
ただし、作り手の人を記述している箇所はそこまでひどくはないです。お金があれば頼んでみたいという気持ちにさせます。
(ただし、お金をためて頼みに行こう!という気にまではさせてくれません。)
結局は、文における描写力がちょっと弱いのかな?
鞄のイラストは眺めているだけで気持ちよくなるぐらい描けているのですが。