アフガニスタンの仏像は破壊されたのではない恥辱のあまり崩れ落ちたのだ
映画では、主人公(実際にアフガニスタンの女優)が祖国の現状に改めて愕然とし、動かし難い現実に翻弄され複雑な嫌悪感を抱いていく過程を観た。映画の最後にある台詞のように今すぐブルカを脱ぎ捨てて逃げ出したいと、観ている方もそんな衝動を覚えるほどだった。
この本を手に取ったのは映画を観て、これまでと違う切り口からアフガニスタンを知ることができると思ったからだ。しかし同映画の監督でもある著者が著す国は、映画でデフォルメされたものでもなくルポで強調される現状の悲惨さでもなく、アフガニスタンの社会とそれを取り巻く国際情勢、そして毎日毎日くり返される日常である。それらが、緻密な下調べと出来る限りの偏見を取り除いた語り口で実に淡々と語られている。
何をもってしても禁じ得なかったアフガニスタンの実像は「恥辱の余り崩れ落ちた」仏像が象徴的に物語ってくれる。
写真集 バーミヤーン遺跡
標高2000メートル級の尾根が連なるヒンドゥー・クシュ山脈──。その一角にある美しい渓谷、バーミヤーンには、かつて2体の巨大石仏がそびえ立っていた。イスラム原理主義勢力タリバンによって破壊されたバーミヤーン遺跡の大仏だ。
本書は宗教、言語、人種など東西南北の多様な文化が交流したかつてのバーミヤーンの痕跡を、1978年に収録した貴重な写真集である。
唐の仏教徒、玄奘三蔵法師もかつて、この地を訪れ「金色に輝き、宝飾がきらきらしている」と、大仏の様子を伝えている。石仏、壁画をおさめた作品の一つひとつから、豊かな仏教世界がうかがえる。
大仏破壊 バーミアン遺跡はなぜ破壊されたか
前作『戦争広告代理店』がNスペの焼直しにしては面白かったので期待して買ったのですが、今回は「まさにノベライズ」という感じで、テレビを見ているかのように、たいして印象に残らないまま読了してしまいました。
内容も、タリバーン政権がいかにビンラーディンに乗っ取られたか、という今となっては衆知の話です。たしかに、ネタは2003年6月と9月放送分なので、古臭いのも当然といえば当然でしょう。
でも、だからこそ「新事実が出てきたわけでもないのに、なぜ今頃出版?」という思いは禁じ得ません。読んだ時間を返せと言うほど悪い出来ではないですが、衝動買いしてしまったのをちょっと後悔しています。