悪人列伝 古代篇 (文春文庫)
史伝を書かせたら海音寺さんの右に出る人は日本にはいないと思います。武将列伝と合わせて読むと色々な人間が居ることが分かります。古人の生き様、死に様を知ることは自分を客観視する何よりの契機です。その点史料に忠実にかかれた悪人列伝は最高の教科書です。古臭いとは感じませんでした。
悪人列伝―中世篇 (文春文庫)
日本史上「悪人」と呼ばれる人物を考察したもの。本書は中世編で対象は、「藤原兼家」、「梶原景時」、「北条政子」、「北条高時」、「高師直」、「足利義満」。本人を論評するのではなく、「何故、彼らが悪人と呼ばれるようになったのか」を時代背景などを踏まえて考察している点が特徴である。義満と政子を除くと古代編等より人物が小粒で、必ずしも「悪人」の評価が定まっていない人選に思えた。
「藤原兼家」の章ではむしろ花山天皇の色乱ぶりがメインである。後は兼家・兼通兄弟を中心とする藤原氏内の権力闘争。兼通を兼家と誤記している箇所があるのはご愛嬌か。"天皇を出家に追いやったのは史上兼家だけだ"と著者が語っているのは勘違いだろう。藤原氏の中には大勢いる。「梶原景時」は義経ビイキには仇役だが、頼朝派から見れば忠実な家臣だったから、「悪人」に入れるのは不適切。内容も凡庸。「北条政子」の物語は人口に膾炙していて目新しくないが、北条時政の政治的センスが光っていた事が再確認できる。「北条高時」は暗愚な執権として有名だが、「悪人」とは思えない。記述も時代背景を主体にしている。「景時」以降の三編で鎌倉時代の初頭と末期を描いているとも言える。「高師直」は好色で有名な足利家の執事だが、南北朝の放埓な空気(婆娑羅)が生んだ小悪党だろう。「足利義満」の章は「師直」の続編のようで、"大魔王"義満を取り上げたにしては物足りない。義満の怪物ぶりを強烈に描いて欲しかった。義満の突然の死に疑問を呈さないのも著者らしくない。
「悪人」伝とは思えないが、史料の綿密な考証と作家としての奔放な想像力を基に書かれており、歴史マニアには楽しめる本。
新装版 孫子(上) (講談社文庫)
本書は『孫子の兵法』で著名な二人の孫子を描いた作品です。
上巻では孫武、下巻では子孫である孫繽の生涯を主に『呉越春秋』『戦国策』等に基づいて描写されています。
上巻の主人公である孫武は平素は気が弱く、妻にも頭の上がらない世捨人然とした人物として登場します。彼は自ら戦場に立つ気概もなければ名声・仕官に利用しようという我欲もなく、ただ単に趣味として古戦場を巡り、得た情報を恣意的に書き記す旅を日課としていたのです。 そのような悠々自適な生活を送る彼の人生に次第に関わりをもつようになるのが楚からの亡命者・伍子胥です。彼は呉の公子光の元で祖国・楚への怨みを隠忍しながら自身の復讐を果たす為、ひいては公子と自らの栄達の為に賢人を求めていました。その彼と孫武の出会いが後の呉の版図拡大の歴史造形の起点と成っていくのです。
孫武の項では著名な人物等が多数登場します。孫武その人の視点からというより、様々な人物の織り成す物語・歴史全体を鳥瞰していくといったところでしょうか。
一方下巻の孫繽の項では孫繽を中心に物語が展開していきます。
個人的には上・下巻共にメッセージ性の強い作品だと思います。それぞれの登場人物の生き様には随分考えさせられました。特に晩年将軍の職を辞した孫武と尚も権勢を極めようと邁進する伍子胥の交流は必読です。 孫子を知る上では勿論のこと、当時の中国の風習・文化・通念を知る上でも楽しめる作品だと思います。
NHK想い出倶楽部II~黎明期の大河ドラマ編~(5)天と地と [DVD]
僕は今、中一です
戦国史が好きで、上杉謙信が好きなので
買ってみました、するとすごかったです!
69年代の大河ドラマなのに近年の大河ドラマにも負けない迫力!
石坂浩二さんと、高橋幸治さんの一騎打ち
中一でも分かりましたおそらくあれは
大河ドラマ史上でも最高の名場面です
天と地と 天の盤 [DVD]
最初に。武田上杉の合戦史実を忠実に「川中島」を再現しているわけでは
有りません。なぜなら、誰ひとりその時代に生きていたわけでもなく事実
内容について事実とは違うとか批判はできません。角川映画が考えた
戦国時代の武田氏・上杉氏の歴史を現代アレンジで再現した傑作と
評価できるのではないでしょうか。武田信玄も上杉謙信も現代の人が
想像した人格イメージに過ぎませんが、この作品における役者の人選や
合戦のありさま、効果的な音楽は、今生きる人に強く訴えかける内容であり
決して古臭いチャンバラ劇では有りません。ストーリーは上杉謙信を中心に
した越後の国のヒーローが領民のための正義の戦を誓う生き様は
現代を生きる人々に是非学んでいただきたいとまで感じてしまいます。