シューマン:詩人の恋
「詩人の恋」の歴史的名盤といえば、ディースカウとエッシェンバッハによる録音だろう。ディースカウらしい詩の感情をすこぶる全身で押し出すような歌唱であった。一方、こちらゲルネの歌いまわしは高貴な雰囲気である。ディースカウが演歌ならこちらは品の良いポップスといった感じ。清涼感に満ちる。アシュケナージのピアノは聴きものだ。このピアノを聴くだけでも十二分にこのディスクを買う価値はある。ところで並録されている「リーダークライス」は“異郷にて”で開始される有名な「リーダークライス」ではなく、ハイネの詩による別篇の「リーダークライス」である。
シューマン:歌曲大全集
このすばらしい全集の中で、最初に発売されたのは、Op24のリーダークライスとミルテの花の男声が歌う曲
を集めたもので、およそ30年位以前だったかと思う。当然その頃はレコードで、ライナーノートをピアニストで優
れた伴奏者である小林道夫氏が書いていた覚えがある。その解説では、緑豊かな草いきれの庭の中に住む
ディスカウ等ドイツの音楽家の姿が描かれ、その中からこの名演が生まれてくることを述べていたように思う。
私はこの演奏を当時何回掛けたかわからない。ディスカウのテノーラルな美しい声と、エシェンバッハのデリケ
ートでニュアンス豊かなピアノが素晴らしい。「私の美しいおくつき」「ミルテと薔薇で」そして「くるみの木」等自
然な高揚が美しい。ディスカウは他にもデムスやブレンデルとも優れた演奏を残しているが、やはりエシェンバ
ッハとの演奏が一番いいと思う。エシェンバッハはなぜピアノを止めてしまったのだろうか、技巧的に最近のピ
アニストに及ばないというが、それが何だというのだろうか、彼には深い歌心があると思う。
シューベルトより更に、ピアノの位置づけが重いシューマンの歌曲において、彼の存在は瑞々しい彩を与えている。
マーラー:交響曲全集
8番「千人の交響曲」の第2部は、LPでは3面にわたりました。
ちょうど面の変わり目と思われる箇所(2カ所)で、不自然な音の空白があります。
マスタリングの問題だと思いますが、
全体の流れ、演奏が素晴らしいだけに、非常に気になります。
また、この巨大な楽章が、1つのトラックにまとめられているのも残念なところ。
名演を廉価で提供してくださるのは嬉しい限りなのですが、
とはいっても、もう少し手をかけてほしかった。
それにしても、この重厚壮大な作品群を、
深みと高揚感を保持しつつ、疲れさせずに聞かせるノイマンて、
やはり巨匠ですね。