少年リンチ殺人―ムカついたから、やっただけ―《増補改訂版》 (新潮文庫)
本書を最後まで読むと、
加害者の少年の反省の色の無さに辟易し、
加害者の親の無責任さに呆れ、
子も子なら親も親だ、とため息をつくことになる。
本書は、少年法で守られた事件を詳細に暴き出している。
しかし、それを成し得たのは著者の情念であった。
著者の情念とは?
読者を驚愕させる事実として告白される。
本書は雑誌記事を元に構成されていたり、などで若干読みにくい。
加害者少年の多さとその証言の多さ、その羅列で、若干読みにくい。
もう少し工夫がほしかった。
日本の合唱まるかじり
日本を代表する50名の作曲家による50の作品が2枚組みのCDに収録されていますので、これから合唱を始める人は勿論のこと、長らく合唱に関わってきた人にも珍しい作品の鑑賞の機会としてとらえてほしい企画だと思いました。いわば日本の合唱の歴史を聴くことができるものですね。
中学校や高校の卒業式の定番ソングとも言える佐藤眞の名曲「大地讃頌」は、オーケストラ版ですので迫力満点です。磯部俶の「遥かな友に」、大中恩の「わたりどり」、佐々木伸尚の「夜のうた」、中田喜直の「夏の思い出」、東海林修の「怪獣のバラード」など、多くの合唱団の愛唱歌とも言える基本作品は勿論のこと、小林秀雄の「落葉松」、高田三郎の「雨」、團伊玖磨の「みなかみ」、多田武彦の「雨」、清水脩の「月夜」等、それぞれの混声合唱組曲の一番有名な作品が収められていますのでどれも大変懐かしく聴かせてもらいました。
一番古い作品である1900年に作曲された滝廉太郎の「花」から、2005年作曲の坂本龍一の「CANTUS OMNIBUS UNUS」まで、100年以上の歳月に渡る日本の合唱曲の歩みを辿ることが出来ます。勿論、歌っている合唱団は、東京混声合唱団はじめ、一般、大学、高校の団体による日本のトップ集団の演奏ですので、大変素晴らしい水準なのは間違いありません。
難曲ではありますが、日本の合唱曲の水準を高めた林光「混声合唱のための『原爆小景』より 水ヲ下サイ」や、間宮芳生の「合唱のためのコンポジション第1番『混声合唱のためのコンポジション』より I」も収められていますし、その他の三善晃、廣瀬量平、武満徹、池辺晋一郎、荻久保和明、木下牧子、松下耕、高嶋みどり、柴田南雄、新実徳英、萩原英彦、尾形敏幸、小山章三、信時潔、三木稔等の作品が収められており、これらの作品を一同に聞くことが出来るアルバムはまず他にはありません。オススメします。
寺よ、変われ (岩波新書)
今年最後に読めて良かった本である。
著者は本職の臨済宗の、お坊さん。
なんとなく図書館でタイトルが気になって読みはじめたら、大当たり。
序盤こそあたりさわりのない、現代仏教批判がつらつら続き、「こりゃハズレかな〜↓」と思ったが、終盤に近づくにつれ、テンション(内容の)はウナギ昇りに上昇!!
こんなことやってます×55くらいのオンパレード…
いやはや参りました
m(_ _)m
内容としては、「古来、日本の寺社はNPOとしての役割を担っていた」とする、ドラッカーの説を現代に甦らせる試みの記録だといえる。
地域のコミュニティへの参画、国内外におけるNPO活動、終末医療への寄与、寺内でのイベント、著作活動、葬儀改革、そして情報公開…
いい意味で唖然とさせる内容盛りだくさんである。
恵まれた環境にある、だとか、資本主義的な顧客中心の商業主義に堕している等々の坊さんサイドからの批判はあるかもしれない。
しかし、私はこの本を読む限りでは、この著者の生き方には賛成である。
まさに自己を賭して、縁起の一因子たるべきこと
これを実践しているかに見える。
如何に、苦しみにみちた世界をよりよくしていけるのか…安直に言ってしまえば、現代における菩薩道のひとつのモデルたりえるのではないか。
感想としては、
伝統とは常に新たなるものなり、
これを思いしらせてくれたな、という感じ。
旧態依然とした、従来の葬式仏教では、日本の仏教は滅びてしまう。
それは、釈尊から始まり、中国、朝鮮を経て、この遠い島国に渡ってきた教えを無に帰することだ。釈尊の苦悩、アビダルマの論師たち、龍樹の論理学、玄丈、鑑真、空海、最澄らの命がけの旅、鎌倉仏教の祖師たち、円空、木喰の仏たち、幕末明治期の僧たちの必死の抵抗…
数え挙げたらきりがない、大きな歴史の流れ、無数の生と死を踏みにじることになる。
血を吸う箱 DVD-BOX
単品3タイトルを揃えるよりも価格的にはちょっと得な商品。BOXセットにしてはブックレットなどの特典物が入っていないのが惜しいが、単品それぞれに解説書が封入されているので、それで良しとしたい。
外箱は、単品ディスク同様に往年の怪奇映画のポスター・アートを想起させるレトロテイストなイラストで、それがまたこの作品の雰囲気にマッチしていて良い装丁だ。
また近年のDVDボックスは、大きくてかさばる特典物を含めた箱にディスクを収めるデザインになっているものが多く、それらは同梱特典を取り出すと箱がスカスカになるという弱点があったのだが(結果的に同梱特典はずっとボックスに収納したままにしておかないければ見栄えが悪いという事態になる)、この“血を吸う箱”はDVDを収めた化粧箱と、特典のカンオケバンクを別々の箱に入れるというアイディアで、前述の扱い辛さを解消している。
これは些細な事だが、BOXモノの買い物が多いユーザーにとっては親切な設計だと思う。
(★単品の『血を吸う』シリーズ3作は、それぞれ個別にレビューを書いているので、そちらを参照して下さい)
電池が切れるまで―子ども病院からのメッセージ
この本に、収められている詩は、どれも素晴らしく、2日で一気に読み終えてしまった。
もしも、無理矢理難点を付けるとすれば、出版物にしては、あまりにも稚拙過ぎる言葉が多い事であるが、この本は逆にそれがプラスになっていると思う。
子どもさん達の素直な想いを「そのまま」文字にしているからこそ、『生きるという事の重み』が、しっかりと伝わるのだと思う。
特に、今何か悩みを抱えている人には、必ず何かを伝えてくれると思う。