実録・連合赤軍 あさま山荘への道程 [DVD]
作品だけを「総括」してみます。
連合赤軍をテーマにした映画。ちょっと自主制作っぽい作りになっている。
なかなか役者さんの熱演は良いし(特に永田役と加藤少年役の人)、集団生活中の緊迫した部分は出ています。
集団心理で見事に内向きになっていく組織。
完全に社会と隔絶してしまった組織の理念(最後の人質との会話でそれがクローズUPされる)。
まさか、浅間山荘篭城中でも「総括!!」という言葉が出てくるとは思わなかった。
それほど染み付いているんですね、この言葉。
被害者が加害者に対して見せる恭順の視線、そして加害者の更にねちっこく追求する展開。
人間の心理がどこまで硬直していくかがわかる。
心理映画の部分もあります。
惜しむらくは、最初に総括された人の殺人シーンが淡々としていたことでしょうか。
まさに一線を越えた部分なんですから、もっと重大に描くべき。
そういえば人の死ぬシーンは事実の羅列っぽい。
警官を撃ち殺してしまうシーンもきちんと描いて欲しかった。
人を殺してしまう・・・この事が後戻りの出来なくなった重要なファクターなのだから
これは逃げずに書くべきでしょう。
あと、最初はヒロインの遠山さんの視点から描いていたものの、
彼女が死んだ後は、作品の視点が散漫になった感じがあります。
そして気になったのはキャンプ中の連赤のメンバーの姿。こんな小奇麗じゃないぞ(笑)。
メンバーが逮捕された理由は「見るからに汚い浮浪者風で周囲に違和感」だったからだ。
身だしなみに気をつけて総括されてしまったメンバーの方が実戦ではおそらく有能だったんでしょうね・・・。
大衆の中に紛れ込んで戦うことこそが、真のゲリラ戦ですから。
問題点は多々ありますが、最後の加藤少年の絶叫の締めはよかった。
同じ言葉を社会で職場で絶叫したくなった人も多いはず。
皆多かれ少なかれ、組織の集団心理の中で生きているのだ。
職場で、そしてマスコミが作り上げる世論の中で!!
この事件を忘れ去った今の時代に是非観るべき映画だと思う。
ノン子36歳(家事手伝い) [DVD]
たしかに何やらの年間ベスト1に選ばれるのも?ですが、面白く観れましたよ。万人受けしない作品でしょうけど。
そもそも酷評される方々が口々に「ノン子の身勝手で自堕落な生き方が不快」「監督が何を言いたいのか解らない」と言われてますが今時、前知識もなく映画を観る人もいないでしょ。 ですから、この作品がうだつの上がらない30後半の女性が華々しく再生したり、或は人生の教訓となり得る類いのものでない事はわかりきっているハズです。そのような作品を求めるなら、他に腐る程あるのですから私はそういった批判は的外れに思いますね。
それに上記した要素が皆無かと言ったらそうでもなく、別段大きな変化こそ無いものの、最初と比べ最後のノン子は別人のように生き生きとしています。 これは監督自身もインタビューで語ってますが、些細な事で人が前向きになれる事をほんと自然に描けています。
キャストに関してはノン子役の坂井真紀さんは惚れ惚れするほど巧いです。本作は全体的に自然な演技が役者陣に求められたと思いますが、本当にそういった演技(とは言えないか…)しか出来ない役者が多い今、ノン子になりきった上で自然体な演技ができる彼女は、若手で上手いと言われている人とは時限が違うと感じました。
また濡れ場も多いですが、妙にそそられます。決して豊満な身体ではない方ですが男を引き付ける不思議な魅力がある気がします。 これは監督が坂井さんに惚れこみ過ぎてるからかな?なんだか往年のロマンポルノを観ているようでしたもん(笑)
中でも情事の後、窓を開けて風に吹かれる横顔は哀感があってとても美しい。
最初はもっと陰気で、鑑賞後モヤモヤしたものが残る作品だと思っていましたが、不思議な爽快感が残りました。 こういった雰囲気の作品中々無いと思いますよ、個人的には近年観たニッチな作品群では上位に挙がる佳作です。
レッド(1) (イブニングKCDX)
今までの山本直樹を期待しているのであれば、止めた方がいい。全くの別人が書いた
と思えるほどであるからだ。
この学生運動関係の本は、コミックも含め団塊の世代のノスタルジックな書き方が多
く、中には悪臭漂う世界もあるが、この本に関してはかなりの現地での取材と事件へ
の洞察が深く、ドキュメンタリータッチで書かれている。
光の雨 特別版 [DVD]
サークル活動等でグループ長がその日の活動の最後に行うあいさつを「総括」と称する人を時々見かける。私は連合赤軍派事件のとき10歳ぐらいであったが、いまだにこの「総括」という言葉を聞くと連合赤軍派リンチ事件が脳裏に浮かび身震いする。それほど連合赤軍派による浅間山荘事件に至る一連の事件が当時人々に与えたインパクトは大きいものであった。武力による抗争・改革は決して許されない、また許してはならないものであるが、1970年代に何があったかのかを後世に語り継ぎ、当時の若者がなぜそのような事件を起こすに至ったかを考察することは意義のあることだと思う。
この映画では連合赤軍派による事件を劇中劇として扱っている。つまり21世紀初頭の青年が30年前の連合赤軍派を演じる、随時適所にこれらの青年俳優達が演じてみての感想を挿入するという構成になっている。また連合赤軍派世代の主監督が当時犠牲になった友達が遺した言葉に怯えて降板するエピソードを採用し、当時、若者であった監督と現在の若者である俳優達との事件に対する受け取り方の温度差を対照的に描いている。連合赤軍派による事件を劇中劇として扱うことにより、この事件に馴染みの薄い現在の若者にとって追体験しやすくなっている、当時を知っている者にとっては特に衝撃が緩和される(仮に当時の様子をルポ風に撮ったものであったら少なくとも小心者の私には鑑賞できない)という利点があり、評価できると思う。