欲しがらない若者たち(日経プレミアシリーズ)
車を欲しがらない、お酒を飲まない、恋愛に淡白、旅行に行かない、安定を求めるなど、最近の若者の傾向を分析しながら、現代と昔でどのように価値観が変化し、その結果、消費の動向がどうなってきたのかを解説した作品。
どの話もTVや雑誌で聞いたことがある話なのだが、そうなった背景が説明されていて、実際のアンケートを用いて分析していたのはよかったと思う。ただ、目新しい情報がなかったのが残念だった。
車を買わないのは別の交通手段があるからだし、お酒を飲まないのも年功序列から成果主義になり始めたことに関連していると思うし、安定を求めるのも高齢化、少子化、不景気といった懸念によるもので、どれも社会情勢の変化が大きな理由だと思う。個人的にはもう少し別の視点、例えば、こうした変化は日本だけで起こっているのか、その他の国ではどうなっているのか、社会情勢の変化に伴い企業のビジネスがどう変わってきたのか、さらに今後はどのような方向を目指していくのかといった分析をしてほしかった。
「嫌消費」世代の研究――経済を揺るがす「欲しがらない」若者たち
タイトル「研究」の通り、研究です。「コーホート分析」とか出てきます。
あるいは「ディルタイ、マンハイム、オルテガの世代論」とかも出てます。
浅い一般常識論と思って読むと分からなくなってしまいます。
それにしても、現在の若者が「上昇志向と劣等感」を根底に持つ、という
分析はどうなんだろう。実際に接していてあまり感じないけどなぁ。
世代論というものを知るには良いかもしれません。
シンプル族の反乱
生活者をセグメンテーションしてターゲットを絞りたい、
消費者像をみたい、という場合、データを入手検討して、見えてきた集団に、
名前をつける。
これは常套手段ですよね〜三浦氏は上手にそれをやっていると思いますが、
データの用い方が恣意的だとか、レッテル貼りという批判は、論を展開するに
当たって、反論への備えが不足していたことによるのでしょう・・・
反論へ備えていれば厚みがもっと出たかもしれません。
実際はどんなに客観的なデータを使っても論を展開するにおいて
恣意的でないことはありえないし、出てきた特徴に名前をつけると、どういう内容の
名前をつけてもレッテル貼りになるので・・・
シンプル族とは・・・
・モノを溜めない
・手仕事に凝る
・基本的な生活にこだわる
・エコ好き
・ナチュラル志向
・レトロ好き
・オムニボア的(文化的雑食)
・ソーシャル・キャピタル (社会資本)つまり人づての情報など社会に根ざした関係性を重視
という特徴でくくられる集団だそうです。これは急に増加したわけでなく、社会全体が
このような価値観に傾いてきて、それが不況のときになると川の瀬が浅くなるように
良く見えがちになると言う。
モノを溜めないで捨てよう!という主張の本はコンスタントに売れているようですし、今まで手芸なんてやったことがない人もシュミ家事したり、古道具がカフェに飾られていたり、エコは雑誌ターザンあたりの読者でもかっこいいことに入るし、ナチュラル志向・・・近年のリネンブームとか、ゲランドの塩が売れていることとか、レトロにしても、北欧ブームも一種のノスタルジーを追うものだし・・・と断片的な現象を繋いでみたら、そうかもなぁという一定の説得力はあります。
昔は一部の変わり者の趣味に過ぎなかったことが最近は商業ベースの広告などにも載るなぁ・・・と。
ただそういう流れを肌で感じていてもデータ上有為な集団のまとまりとして現れなければ
マーケ上の消費者ターゲットには使えないわけで・・・
こういうのは先に言った者勝ちだし、それをなんとか一般論的に成立しやすい、見えやすい形でくくった功績はあるのでは?
こえを社会全体の流れと大風呂敷広げてしまうと・・・それはちょっと大きく出すぎですがこういう価値観の若い人もいるなぁという目でみると、周囲に無印大好きのシンプル族は何人も思い浮かびます。