吃逆
主人公が生真面目な男の方なのか、洒脱な男の方なのか...どちらかはわかりませんが、この二人のコンビが宋の時代の中国で"新聞記者"として奇妙な事件に首を突っ込み、解決(?)していきます。新聞といっても、いわゆる夕刊紙を想像してみてください...それも弱小の(笑)
3作品が連なっており、いずれも何かほの暗さを感じつつ、二人やその周辺の人物とのやり取りがちりばめられて、読後感の悪さを持ちません。
そして、この作者の作品では「健気で愛らしく、かつ泣きそうな目にあうが、主人公(達)よりしっかりと地に足の着いた女性」が度々出てくるようですが...今回は料理人で登場です。
当時の宋の事物が豊富に織り込まれており、一度目は筋を追い、二度目は周辺も細かく読み勧めていくと更に味わい深くなります。中国の時代小説なんて...と食わず嫌いの方にちょっとオススメしたい本です。
琥珀枕 (光文社文庫)
中国を舞台にした、不思議な仙薬や壺、井戸にまつわる連作短篇集。「太清丹(たいせいたん)」「飢渇(きかつ)」「唾壺(だこ)」「妬忌津(ときしん)」「琥珀枕(こはくちん)」「双犀犬(そうさいけん)」「明鏡井(めいきょうせい)」の七つの話。
水晶玉を覗き込むような感じで遠見亭から事件を眺めるのは、12歳の少年・趙昭之(ちょう しょうし)と、彼の塾師である徐庚(じょこう)先生。しかしこの先生、ただ者ではありません。普段は古井戸に住んでいて、陸に上がっている時だけ老人に姿を変えている、すっぽんの妖怪であります。
連作短篇として話がつながっていく趣向が、面白いですね。前の話でちらりと名前が出てきた端役が、次の話では主役としてスポットライトを浴びている、何ていうんだろ、廻り灯籠的な話になっているのです。さらに、最初は昭之と徐庚先生のふたりだけだった舞台に他の登場人物たちが出てくるに従って、楽屋裏かと思っていたところが表舞台へと転じている妙味もあります。聊斎志異を思わせる不可思議な綺譚の味わいとともに、連作短篇の趣向が気が利いていたところ。ユニークで面白かったなあ。
なかでも気に入った話は、魅力的な妖怪が出てきた「妬忌津」と、ミステリーの妙味は集中随一の「双犀犬」。