二度と戻らぬ (幻冬舎文庫)
美人の雑誌編集者が中年のばくち打ちと出会い、ギャンブルの愉悦に身をゆだねる。
著者お得意の舞台設定で、またいつもの感じの話しの展開かと思っていたら、
途中から張られていた伏線が効果を現してきて、一気に読み切ってしまいました。
ある程度先が分かってからも、グイグイ引き込まれる描写にやられた感じです。
あと、いつもの森巣博を期待していたら微妙にすかされること請け合い。
もちろん「合意の略奪闘争」「死屍累々、厭になるほど死屍累々」等の森巣節は健在です。
また日本社会を茶化した(?)描写もいつも通りで、このあたりは予定調和の世界。
ただ今までとは何か違った印象を受けた作品でした。
いつもの森巣節を期待している方にはもちろん、
そろそろワンパターンで飽きてきたかな?と思われている方にもお勧めです。
賭けるゆえに我あり
ギャンブルは割が良い勝負だけしてれば長く続ければ負けることはない訳ですが、基本人間は本能的に間違えるように出来ています。
なので、何かしらの根拠を持って自分の行動が正しいのかを判断する作業が必要になってきます。
目次読んだだけで、かなりリアルな感じだったので即買いしました。
まだ届いてないですが、何を見せてくれるのか楽しみです。
日本を滅ぼす〈世間の良識〉 (講談社現代新書)
「COURRiER Japon」誌の連載「越境者的ニッポン」を新書化したもの。オーストラリア在住の自称チューサン階級(中学3年生程度の知識の持ち主のこと)の著者が、大手メディア(マスゴミ)、官僚、政府、公益企業(東電など)に対する怒りを代弁してくれる。言葉遣いがやや下品だったり、下ネタがかったりしているが、本質を突いているので全く気にならない。
特に「利潤の私益化・費用の社会化」こそが、なぜ日本がほぼ回復不可能な財政赤字状態に陥ったのかを的確に表している。官僚や公益企業、大企業の経営層など一握りの人間どもが、国民の利益を吸い上げて私物化し、そのために掛った費用は国民のツケに回しているということだ。これは過去においてもそうであるし、現在も続けられていることだ。
「民営化」とはそれまで社会資本だったものが、一部の人たちだけの私有物とされることにほかならない。元々税金で作られたものにも関わらずである。鉄道、電話網、郵便事業などすべてが同じ構図である。
このような不公平(不正と言うべきか)なことが行われないように「権力の監視」をすることが、大手メディア(マスゴミ)などジャーナリズムの使命だが、日本のである「権力の監視」をせず、大手メディア(マスゴミ)は、お上から垂れ流されるリーク情報だけを報道する発表ジャーナリズムに終始する。その原因は野中広務が明らかにしたように、記者たちが政府からは「官房機密費」を受け取り、公益企業(東電など)からは接待漬けになっていることによる。
何がどう報道されたかも重要だが、何が報道されなかったかも重要である。昔は新聞・テレビの報道がすべてだったが、今はネットメディア、海外メディアなどから情報が得られる。大手メディア(マスゴミ)が何を報道しなかったかもすぐ分かる。それは自分たちに都合の悪いことで国民に知らせたくなかったことだと考えて間違いないのである。
著者はこの日本の状況を「おとーちゃんばかりがお饅頭を食べる思想」と表現する。また、フランツ・ファノンの「無知というのは知識がないことではない。疑問を発せられない状態を指す。」を引用して、日本国民が「世間の良識」に縛られて、疑問を発せられない状態に陥っていると言う。
大手メディア(マスゴミ)の報道によって形成される「世論」、自分たちの都合の良い「世論」を形成し自分たちの取り分を増やすことしか考えない官僚、政府、公益企業ども。結局のところ大手メディア(マスゴミ)の無責任さが最も責任が重いということではないのか!