弔辞大全〈1〉友よ、さらば (新潮文庫)
1982年に青銅社から出た『弔辞大全レクイエム57』の改題・文庫化。続巻『神とともに行け 弔辞大全2』がある。
著名な文学者たちに贈られた弔辞を集めたもの。開高健のは入っていない。いちいちの解説などもなく、開高健は編者を務めたのみ。
55件が集められている。北村透谷の死に際して島村藤村の詠んだものに始まり、尾崎紅葉に泉鏡花、島村抱月に松井須磨子、萩原朔太郎に三好達治、堀辰雄に室生犀星、三島由紀夫に武田泰淳などなどと続く。内容や文調は千差万別。心を打つような別れの言葉があるかと思えば、短く形式的なものもある。良くできたものもあれば、ピント外れのも。
ただ、死は一回きりだから、それぞれに込められた思いには真剣なものがある。感情の吐露がある。そこが面白いのだ。
予想外に楽しめる一冊だった。