斬る [DVD]
たまたまテレビで昼間に放映されていたのを、手作業しながら横目で見ていたのだが、導入部からびっくりした。藤村志保さん演じる御殿女中がお殿様の側室を暗殺する場面の流麗でかつ凄惨な美しさ!こんな時代劇が1962年に作られていたのか!と新鮮な驚きがあった。
悲劇の出生の秘密を背負った若き天才剣士(市川雷蔵)の清冽な生涯を、美しい映像で描いていますが、時代劇にありがちな湿度の高さや感傷はありません。クールでハードボイルドな時代劇です。いまどきの時代劇の方が、よっぽどしょうもない。脳萎縮だ。
脇役陣がまたいい。すでに亡くなられた俳優さんが多いが、昔は、時代劇に出てリアルさが出る「役者」らしい風格のある方々が多かったのですね。万里昌代さんのヌードも美しいです。ひょっとしたら、この映画は、「女の力」が裏テーマなのかもしれない。ともかく、日本の時代劇は、黒澤明ばかりでないよ、三隅研次を観なくっちゃ!!
いねむり先生
女優だった妻を亡くし、絶望の淵に立たされた主人公が
作家であり、エッセイストである色川武大氏と出会うことで
再生をしていくという自伝的小説です。
奇しくも、仙台で震災に遭われた伊集院さんが、
このタイミングで「絶望からの再生」「人は人によって救われるのだ」
という優しくも力強いテーマの小説を出版されることに、
なにか不思議な力を感じざるをえません。
今の日本人に必要な一冊だと思います。
NHK人形劇クロニクルシリーズVol.4 辻村ジュサブローの世界~新八犬伝~ [DVD]
全部見たく成りました。しかし残念ながら消されてしまってこれだけ(;_;)今でも充分通用する内容と映像が残念で、成りません。
今と成っては、制作スタッフもお亡くなりに成っているようで、本当に残念です。
ロング・グッバイのあとで ―ザ・タイガースでピーと呼ばれた男―
NHKで沢田研二が岸部一徳(サリー)森本タローとともに作った歌を披露した時、胸を突かれる思いにとらわれた。
タイガース解散と同時に芸能界からふっつりと消えたピー。
のちに慶応大学を卒業して慶応高校の教師になっているという消息を知らされた。
高校に復帰し難関校に挑戦して合格し教職の道を選んだ彼には素直に拍手を送りたい。
人気絶頂を経た彼がどれほどの決意と不屈の精神力で新たな道を歩いてきたのかを思うと感銘を受けるし、芸能人的な安易な生き方を選ばなかったことは素晴らしい。
その教師という職業柄、芸能色は避けたいところであるというのは理解できるのだが…。
かたくなに過去を否定するような生きざまは彼が負った傷の深さを勝手に想像させて哀しかったし、ピーの存在を懐かしむことすら許さないのかなあとさびしい思いも多々あった。
だから、NHKでジュリーが切々と歌い上げたピーへのメッセージが胸に染みた。
何があったか知らないが、もう一度会えたらいいのに、と願った。
まるでおとぎ話のように、そのメッセージが届いたらしい。
歌への返歌がこの本だ。
還暦を過ぎて再び巡り合ったおじさんたちの同窓会は5時間に及んだというくだりに安堵するとともに、微笑ましくて、もやが晴れたような気分になった。
タイガースの中で一番あどけない顔をした少年だったピー。
たしかにあまり芸能人的な器用さが無く、イメージに反して気難しさを感じさせる言動もあったが、その何をしてもぎこちないところがファンに受けていたような気がする。
それは歳月を経ても同じだったようで、この本も器用に書けているとは言い難く、文学部の割にはあまり文章も達者とは言えない。
それでも、訥々と生きたピーの人生がそこにある。
疑いようもなくそれはあの瞳みのるそのもの、まるごとピーで安心して、おかしくなって、懐かしかった。
そして、この本であの中井マネージャーの公私に及んだ深い愛情やその思いを知ることができてよかった。
眠狂四郎女妖剣 [DVD]
旧3作の勧善懲悪性に加えて、狂四郎ガールズをはじめとする耽美的色彩が前面に出てきた記念碑的作品。藤村志保のむっちりとした生脚や久保菜穂子の薄着から透けて見える美脚が発するエロスにやられた。狂四郎曰く、「女は哀れに見えてはいるが、その本性は魔物だよ。」多くの殺陣シーンも工夫が凝らされており、稲葉義男や中谷一郎ほかの好演技が画面を引き締めている。