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小津安二郎先生の思い出 (朝日文庫 り 2-2)
小津映画と言えばこの人ありき・・・というぐらい必ず出演していた笠智衆さん。
彼の生い立ちから始まり、役者としての挫折、それを救った小津先生との出会い、そして別れまで多くが語られている。
当時の映画の撮影秘話など満載でとても楽しい。
いちばん驚いたのは「東京物語」のときの笠智衆さんはまだ49歳だったということだ。
本人はフケ役が多かったと言っているが、昔の役者はずいぶん我慢させられたようである。
また家族との生活、孫との暮らしなどなど写真も掲載されているのが嬉しい。
少しだけ笠智衆さんに近づけたような気がしました。
平成育ちの自分ですが、小津映画はどことなく懐かしい感じがします。
古き良き日本の縮図と言うか・・・私が知らない日本の姿が小津映画にはあるように思う。
そんな小津映画を支えた笠智衆の人生はずっと小津先生と共にあったと言っても過言ではない。
先生への感謝の気持ちも籠めて書かれたこの作品にはどことなく哀愁を感じる。
ぜひ読んでみてください。
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二十四の瞳 デジタルリマスター2007 [DVD]
初めて観たのですが、最初のタイトルが出た瞬間、もう何故だか涙がこぼれました。
悲しい場面ばかりでなく、楽しそうな場面、日常の何気ない場面でも、涙が流れました。2時間36分、涙流しっ放し。
小豆島の自然。自然しかない懐かしい風景。いや、人工物であるはずの家等も、自然の一部となっている。
岬の生徒たちは、4年生までは、地元の分教場に通う。昭和3年、分教場に赴任して来たのは、洋服を着て自転車に乗った大石先生。
大石先生が受け持つことになった新1年生は、12人。自分を見上げる24の澄んだ瞳を見て、大石先生は思う。『この瞳を濁しちゃいけない』と。
しかし、戦争と貧困で、24の瞳は濁っていく……。
海の色も、山の姿も、そっくりそのまま、昨日につづく今日であったが……。
昭和3年の分教場時代、5年後の本校時代、その8年後の出征、さらにその4年後の終戦、そしてその1年後。
20年以上にわたる物語であるが、大石先生は、高峰秀子がひとりで演じている。20代の若若しい新任教師から、40代の(昔の40代である)お年寄りまで。
これが今さら私が言うまでもなく素晴らしい。
そして、私が驚いたのが、1年生のときの12人と、6年生になった12人が、そして、大人になった11人(1人は登場しない)までもが、まるで1人の役者さんを使って20年かけて撮影したかのように、繋がっていること。
クレジットで5年経ったことが表示され、6年生になった12人の子どもたちが、船に乗り、『荒城の月』を歌っている場面で、一人一人画面に登場するのですが、みんな『大きくなったなあ』と思える。『この子誰?』と思う顔がない。スゴイ。
これは、種明かしすると、まず、小学1年生と6年生の、顔の似ている兄弟姉妹をオーディションで選び、大人の俳優も、その子たちに似ている人をキャスティングしたとのことです。似ているという理由で、俳優でなくスタッフの中からも選ばれているそうです。
似ても似つかぬ人が、子ども時代と大人になってからを演じていると、結構興ざめしてしまいますが、似ている人を探してキャスティングする効果は、想像以上に大きいということを感じました。
戦争に押し流されていく人人の、貧困に悩まされていく人人の、日日の暮らしを決して激昂することなく描くことで、静かに反戦を主張しています。
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東京物語 [DVD] COS-024
DVDで一度、名画座で一度見ました。小津監督の描くこの昭和の世界が好きです。後ろに流れる音楽も好きです。私には森田健作のドラマ「俺は男だ!」で馴染みのある笠智衆さんも好きな俳優さんで。「秋刀魚の味」(1962年)より前に撮った作品(1953年)なのに、役柄は「秋刀魚、、」の役柄より逆にもっと年老いた男性であるのに見事!に演じているのには驚いた。ふたつの映画を比べた場合、脚本は「秋刀魚、、」の方がユーモアがふんだんに散りばめられて、余裕みたいなものを感じます。ただ映像はこの「東京物語」、モノクロですが 昔の尾道の風景、SL列車、、、すばらしいです。最後に、やっぱり原節子は銀幕のスターです!!時代を超えて憧れてしまう存在です。
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夢 [DVD]
オムニバス形式の映画。
狐の嫁入りを題材にした第一話。
その行列が行進する様子が、見てはいけないものを見てしまったという
強烈な思いの反面、固まってしまって目が離せない。
嫁入りの行列は粛々と進みながら、みなが一斉に狐らしい動きで
振り返ったり止まったり。
何か畏敬の念を抱かすような、人間と交わってはいけない世界が
そこにあります。
第二話。
桃の節句を祝う名家の子供と友人達。
そこに現れた謎の少女。
少年はその子を追って、伐採されたばかりの
桃の木に辿り着きます。
その少年を待ち構えていたように、突然雛人形が現れるのですが、
その登場の場面、なんてことはないのにゾっとするほど印象的。
その後、伐採を嘆いてくれていた少年の為に、雛人形達は優雅な舞を
見せてくれるのでした。
その他、雪女から逃れる話。
また、自分の戦死を自覚せず現れた部下と、生き長らえた上官とが
トンネルにて相対する話。トンネルから青白い顔をして軍靴をならして
出てくる部下達に英霊の姿を見ます。
まだまだ胸打つ短編が詰まっています。
ある程度大人になってから観て良かったと思った作品。
十代で観ていたら、映像美だけしか残らなかったかもしれません。
それから、スピルバーグに感謝。
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大船日記―小津安二郎先生の思い出
笠智衆氏の自叙伝を語り口調で綴られており 読み進むにつれ あの独特な口調で 自分に語ってくれているかのようでした 亡くなってから もうずいぶんになりますが この本を通じて リアルに笠さんと お話できたような気がしました