債権法の新時代―「債権法改正の基本方針」の概要
債権法の実務は、残念ながら出てこないが、たとえば2008年に商法から保険法分野が独立して施行されたとか、債権法の改正議論の素案は本書の紹介のごとく出来たが、まったくの民法学者の自発的意思による改正案作りであって、法務省は場を提供しただけで、将来の改正のたたき台になる議論を民法学者が最新の叡智をもってまとめたに過ぎないとか、様々な知見を得られた。また、内田先生も教官職を辞され、法務省に籍を置かれるようになった、など、内田信者なら必須の情報もでている。「新・債権法」が出来る時、我妻民法から内田民法へと完全移行があるだろうと予感させる一書である。
キャリア官僚になったアタシ。。。でも、挫折しました(>_<)―24歳女子が見た官僚と刑務所の世界
マスコミ受験に失敗した著者が一念発起して公務員受験を志し、4カ月の猛勉強の末、難関の国家公務員1種試験に合格! 女子少年院に配属され、挫折して退職するまでが描かれています。
最終試験に合格しても省庁に入れるわけではない公務員制度の実態を初めて本書で知りました(公務員の受験料が無料なのも)。試験合格はあくまでも面接官に会うための予備審問みたいなもので、官庁訪問をして面接官の覚えめでたくないと入省できません。教育行政を大学院で専攻していた著者は、文部科学省を目指しますが、官庁訪問で不合格。専攻が生かせる「少年矯正」を担当する法務省矯正局に入省します。
受験当時24歳の普通の女性にしてみれば、霞ヶ関(東京)で働きたいのは当たり前。なのに、無理して地方勤務のある矯正局に入省したのが、間違いの元だったのかもしれません。文章中にも「霞ヶ関で働きたい」という本音がちらほら見え隠れしています。その矛盾したところがそのまま書かれている点も若さなんでしょう。
数か月しか現場を見ていない著者に少年院や刑務所内の実態を深く書くことを求めても仕方ないと思います。ここはむしろ就職難の時代に生きる24歳の女性が見聞した、日本の未来を背負う官僚諸君の実態を知ることこそが、この本を面白く読むポイントではないでしょうか。いままでの公務員や官僚に関する本はネガティブな面しか書かれていない傾向がありますが、本書の著者は若いだけあってバランス感覚が良く、最後まであっと言う間に読むことができます。読後感も悪くありません。公務員試験に興味を持っている人には特にオススメです。