若さま侍捕物手帖一 (ランダムハウス講談社時代小説文庫)
柳橋、船宿喜仙の居候。船宿の一人娘おいとのお酌で朝から晩まで御酒をきこしめしてばかりの結構なご身分。いつもうつらうつらしてるくせに、御用聞き遠州屋小吉の持ち込む難事件、怪事件を持ち前の観察力と推理力で見事に解き明かします。屈託がなく、ざっくばらんな性格ですが、生まれながらの気品と貫禄があり、一喝すれば、(葵の印籠など出さなくても)どんな旗本、奥女中、浅黄裏もたじたじとなる。これがご存知(ないかもしれませんが)若さまです。
若さま侍捕物手帖を読みふけってから、数十年たちました。このところ書店から姿を消していましたが、今回新シリーズが発売され、若さまファンとしては喜ばしいかぎりです。若さまの天衣無縫な人柄のせいでしょうか、若さま侍を読むと、のどかな気分になり、浮世の憂さを忘れます。
ニッポンの城 (エイムック 1872)
城の選択、写真、解説記事、レイアウトなどは非常に良いと思う。
ただ、ルビ(読み仮名)の振り方が素人丸出しで、見苦しいとか情けないとかいう以前に、
見づらくて仕方が無い。
担当者の無知とか手抜きとか、いろいろと事情はあるのだろうが、こんな雑な仕事を
する職場は許しがたいというか、すごく羨ましいというか、なんだか複雑な気分になる。
一番目立つ見出しや城の名前のルビがこの有様では、内容もあまり鵜呑みに
できないかもしれない、などと思ってしまう。
素人がワードで編集しているわけでもないだろうに、基本中の基本すらできていない
文字組みというのは、商業出版物としてはダメすぎる。誰もチェックできる者が居ない
というのであれば、出版社の「格」を問われる由々しき事態だと言わざるを得ない。
内容的にはなかなか良さそうで、本当はかなり欲しかったのだが、どうしても
美意識が耐えられずに購入を見送ってしまった。
若さま侍捕物手帖三 (ランダムハウス講談社時代小説文庫)
本巻は、中編「まんじ笠」ほか短編7編を収録。目玉は「まんじ笠」。大目付遠山隼人正の腹違いの妹八重が知行地の屋敷から失踪しました。与力佐々島俊蔵から捜索を頼まれた若さまはぶらりと屋敷を訪れますが、草深い屋敷に隠居中の生母おいしは、なぜか若さまを追い返します。おりしも遠山の知行地では、土地の顔役雁木の四郎兵衛と遠山家出入りの小虎の三吉が喧嘩支度の真っ最中。若さまは、十手取縄を預かる雁木親分に、娘の探索と喧嘩の中止を申し渡しますが、隼人正に怨みのある親分は、けんもほろろの応対。あまつさえ、若さまを叩っ斬れと用心棒に命じる始末。若さまの腕と知略が冴えわたる一編です。