リスト:ハンガリア狂詩曲全集
シフラは2度ハンガリー狂詩曲を録音していますが、こちらの新しいほうは、年をとったせいかやや技巧的なキレに衰えが感じられました。
50年代の録音の方がシフラ節炸裂ということで評価星4つにしましたが、しかし50年代の録音が超人すぎるだけで、こちらが下手糞なわけでは決してありません。
こちらはこちらで、一味違うグリッサンドを聞かせてくれるし、高速オクターブ奏法など相変わらずの超人です。
リスト特にハンガリー狂詩曲においてシフラの右に出る人はいないでしょう。
NHK「その時歴史が動いた」 この難を逃げ候こと 本懐にあらず~改革者・大久保利通 暗殺の悲劇~ [DVD]
大久保利通の胸の中には西郷隆盛がいたのではないか視点を含め演出されている。
幼少の頃からの親友西郷隆盛と共に大政奉還を行い明治維新を成し遂げるが、その後西郷と征韓論で意見が対立する。西郷は故郷鹿児島へ戻り、その後西南戦争で政府と戦争を起こす。西郷と話しをしたいと願うが、かなわない。大久保と西郷との歴史の中で、お互いの志の高さを感じ、また理想の政治とな何かを考えさせられる。
バルトーク 晩年の悲劇
この本を読み返すといつも不思議に思う事がある。著者のアガサ・ファセットは、アメリカへ亡命し結果1945年に白血病で亡くなるまでのバルトーク夫妻の5年の日々を、あまりに克明に綴っているからだ。なんだか一編の長編小説を読んでいるような気分になる。
もちろん人の記憶が、この5年という歳月の日一日の細部まで記憶していようとは思えない。やはり彼らの身近に居て、時には家捜しに付き合い、時には夫人の不満を聞き、共に旅行し、悩みの相談にのり…という、慣れない亡命生活に躓きながらも一歩一歩と歩みを止めない夫妻の生活に寄り添った日々を、その都度日記にでもつけていたのだろう…と察している。しかし…それにしては、本来ならばどんな天才にも凡人にも変わらない“一日”という時間をあまり劇的に装飾しているように感じられ…それが読者として一抹の違和感の基になっている。
ただ、この違和感をあえて抜きにすれば“最後の古典的な天才”と云われたベラ・バルトークという人の、余りにも大変な性質を窺うことができる。読み終えて、改めて邦題“〜晩年の悲劇”という言葉を眺めると正にそうだったのだ、と感じられます。これは、悲劇というよりほかに表現できない生涯だったのだと。逆に云えば1人の人間がここまでの領域に達する事がありうるのだと感嘆します。彼の死を、“寧ろ自殺に近いもの”…と書いたのは高橋悠治氏だったか。まったく同感です。
ブラームス:交響曲第1番/大学祝典序曲/悲劇的序曲
何度も語り継がれている演奏ですが、日本の一部の評論家の影響で、あまり評価は高くありません。
でも僕はこのメロディーを歌わせることに躊躇しない演奏が大好きです。また録音がフルヴェンや
トスカニーニより遙かに良好で現在のCDはかつてのSONYレーベルの音の堅さも払拭されています。
ワルターが数々のステレオ録音を残してくれたのは人類の文化遺産だと思います。最新のDAコンバー
ターを通して聴くとまた新たな発見がありますがポータブルシステムで聴いたとしても、美しく指揮
者の温かな誠実さは心にしみます。劇的な演奏は別の指揮者にまかせて、あたかも呼吸しているよ
うな音の流れに身をまかせれば、しみじみとした幸福感が心を満たしてくれます。