Take Ten
ジャズの「名盤」てなんだろう。評論家がほめるのが名盤なのか。ポール・デスモンドほど評論家の間で評価の低いサックス・プレーヤーはいない。イージーリスニングとかムード音楽とか悪評サクサク。しかし聴きもしない「名盤」を揃えるのだったらこの一枚を。「黒いオフフェ」、ジム・ホールの澄み切ったギターに、くぐもった、一聴して、デスモンドと解るデスモンドの暖かいサックスがかぶる。恋人や奥様が「ジャズなんてうるさくていやだ。」なんて言うのだったら、この一枚を聴かせてあげて欲しい。あなたとパートナーの距離が縮まるにちがいない。「しょっちゅう聴いて、一生手放さない」のが名盤の条件だとすれば、これは間違いなく「名盤」です。(松本敏之)
タイム・アウト
1959年の録音なのに、よほどマスターテープが良質なのだろう。アナログ盤とともにCD盤もオーデイオ・チェック用に愛用している。
勿論、全曲秀逸だが、「テイク・ファイブ」が一番いいわけで、名曲だと思う。デイブは歳をとっても背筋をピンと伸ばしビアノに向かっているが、これは若いころの演奏なのに凛としたブレイ。持っているCDは古いもので「カナダ盤CBS」なのだが国産でも勿論構わない。ピアノ、アルトの甘い中音を始め、シンバル、ハイハットの余分なものの無い高音、それに一番気に入っているところはベース、バストラの空気のように軽い低音がしっかり録音。レンジが広く、セパレーション抜群なので気に入っている。
Time Out
このCDに収められている名曲「テイク・ファイヴ」ですが、リーダーのデイヴ ・ブルーベックは、3+2拍子の5拍子という変拍子を本当に律儀に刻んでいます。一方メロディーを奏でるアルトサックスのポール・デスモンドは、とても柔らかくしなやかな音でスウィングしています。これだけ甘い音色のアルト・サックス、というのもなかなか聞けません。途中のドラム・ソロのジョー・モレロのアド・リヴもいつ聞いてもステキですね。
こんなに楽しいジャズもあるのだ、という見本のような演奏です。30数年前ですが、CMにこの曲が使われ、日本でも多くの人が知っているというジャズの名曲中の名曲でもあります。ジャズと変拍子という一見風変わりな組み合わせから、とてもステキな演奏が生まれました。最近でも、アリナミンのCMでお馴染みだと思います。
この『タイム・アウト』というアルバムは、全て変拍子のジャズの演奏ばかりを集めていますので大変ユニークですよね。
個人的には、1曲目の「トルコ風ブルーロンド」の9分の8拍子の曲も気に入っています。2+2+2+3拍子という刻みですので、スウィングできるのだろうか、というものですが、デスモンドの上手さが光る演奏です。そしてとても楽しい曲ですので、印象に残るのでしょう。
本当に何十回と聴いてきたアルバムです。若い世代の方にも是非聴いて欲しいものです。