So Far From Real
ぼくは昨今の洋楽ヒットチャートなるものにはまるで無頓着である。そんなぼくと「Cauterize」の接点は以下の通り・・・。「1080」という任天堂ゲームキューブのスノーボードゲームを買った。任天堂のゲーム音楽はこれまで社内制作のものを使っていたのだが、今回初めて、制作者たちがスノーボードのイメージソングを洋楽からチョイスし採用したのである。いつもゲームをする前に煙草を1本吸いながら、オプションメニューにあった彼らのビデオクリップ(オープニングテーマである「choke」)を見ていた。何度も聴いているうちに、彼らのサウンドがきゅうりのようにクールなことに気づく。他の楽曲もぜひ聴いてみたい。・・・という次第。何が「きっかけ」になるか、全くわからないものである。
Choke
ファイトクラブのカルト作家も、もはやベストセラー作家の地位を獲得しつつあるような雰囲気。たしかニューヨークタイムスベストセラーにはいっていたと思う。しかし依然としてなにやら危ない雰囲気とアンダーグラウンドな世界観をもつ作家であることにはかわりがない。これまでの作品と比べるとプロットが多少はまとまっていてストーリーは追いやすいと感じる。
筋を言うとつまらなくなってしまうので言わないが、今までの作品を読んできた人には「そうだったのー!?」というびっくりネタに期待をかけすぎて、センセーショナルとまではいえなくなったかも。それでも次回作に手が伸びることは間違いない。ちなみに美しい感動作のようなものが好みの人には絶対お勧めしません。Bret Easton Ellis やWill Selfなど、「悪趣味」と酷評されがちなものが好きな人には大推薦。
TECHNODON REMIX II
リミキサー=パターソンはTHE ORBの『OXBOW LAKES』でミキシングを担当しいた人物。リミキシングにルールなどないのだから『解体』と『再構築』の腕前とセンスを聴けばいいと思う。YMOは素材なのでこのさい忘れた方がよい。リミキシングされた楽曲が平均10分台になって5曲ある。
かなり『アブストラクト=抽象的』なサウンドをねらったようだ。へたにYMOにコビを売るようなのよりも、こういう風にまったく違う世界を構築してくれたほうがよい。ずたずたに切り裂きそこから新たな世界を構築している。ここにはYMOはない。パターソンの頭の中にある『美的な世界のみだ』。
聴く人には相当な衝撃が与えられることになるだろう。アンビエントダブになっているのだから。これはパターソンというリミキサーによる独自の作品と考えた方がよい。決し!て『楽しもう』などとは考えずに『サウンド体験』をすると考えればよい。
時間と言うものが微妙にずれていき、歪んでいくさまを体験したいなら聴くべきだ。そういう意味では成功しているアルバム。
10点中8点 サイファイワールドが好きな人におすすめ
チョーク! (Hayakawa novels)
出ました。チャック・パラニューク、邦訳第四弾。
今回も文章のテイストは全く変わっていません。病的にばら撒かれた豆知識。削りに削られたスピードのある文章。空虚でコミカルな一人称。時系列を一度バラして組み直した、リズムのいい構成。ラストへの、物語の劇的な収束の仕方。そして頭蓋骨の裏側に塗りつけられたような印象を残す、数々の名台詞。
本作の主人公も、やっぱりいろいろと異様な行動を取ります。それらの行いを、強引に筋が通ってるように語る(登場人物に語らせる)のが、この著者の味。
本作は、著者の今までの作品に比べ、物理的には結構平和です。大量の血は流れません。飛行機も落ちません。
倫理的には、あまり平和でない(たぶん)部分がありますが。
また、前三作よりも笑えるシーンは多いのでは。
本作にも、「ファイト・クラブ」のメインキャラの二人の関係のような、でっかい落とし穴が掘られてあります。僕も口が開きました。あらかじめ疑って読めば、なるほど、いたる所にヒントがあったのに。この著者は、やはりこーゆーところがうまい。
さあ、セックス中毒で母親は精神病院患者の、この主人公。誰かを救うのか、救われるのか。
本作が初パラニュークの方のために。
本作を読んでちょっと気に入らなくても、文体自体が大丈夫なら、「ファイト・クラブ」や「サバイバー」ならハマれるかもしれません。また「インヴィジブル・モンスターズ」は、ものすごいおもしろさを秘めていますが、時系列のバラしかたがかなり激しいので、本作より遥かに読みづらい可能性があります。全部おすすめなんですけどね。
あと、池田真紀子さんに、「今回も素晴らしい翻訳、有難うございます」と言いたい。