boys don’t cry(ボーイズ・ドント・クライ) (角川文庫)
翻訳調の抑制の効いた文体で、淡々と語られる、80年代トーキョーのナイトライフ。岡崎京子の『東京ガールズブラボー』(宝島社)と、本棚に並べて置きたい。
ボーイズ・ドント・クライ [DVD]
この映画で主演のヒラリー・スワンクは、アカデミー賞、ゴールデン・グローブ賞の最優秀主演女優賞に輝き、共演のクロエ・セヴィニーもアカデミー賞の助演女優賞にノミネートされたりと出演者の演技力は、素晴らしい。
話の内容としては、1993年に実際におきた事件を元に監督自ら当時ブランドンに関わった人々に直接話を聞きリアルに作品を描いている。見終わった後、後味が悪くなる映画だがその分、心に残る映画でもある。
ボーイズ・ドント・クライ【字幕版】 [VHS]
この映画は、主人公を取り巻く人々の激しさが色濃く、見終わった時には重苦しい気分にさせられた。主人公が痛々しすぎてたまらなかったからだ。男だとか女だとかは関係なく、主人公を巻き込んでいく出来事がある意味当たり前で、そこらじゅうに転がっていそうで、容易に自分を重ねることができた。望みも喜びも快楽も、葛藤も後ろめたさも恐怖も。
性同一性障害も性犯罪も、ニュースなどで扱われている。決して絵空事でないその現実が急にこの身に押しかかるような気がしてしまった。主人公を取り巻く人物たちが主人公に対して見せた笑顔。それがたった一つの嘘-主人公にとっての望み-が暴かれただけで変わってしまった。彼らにとって、主人公はモンスターだった。残酷な話だと思うのと同時に、出来事の数々は、とてもこの現実を映しているのだと思わせられる。友人たちに拒絶され、裏切られ、人としての尊厳さえも傷つけられる。精神的にも肉体的にも深い傷を負った主人公には絶対的な支えが必要だった。それが主人公の恋人の存在だ。ラストでの恋人とのやり取りでは少し慰められる。
憎悪犯罪は歪んだ考えからなる"偏見"から生まれる。その正当性の欠如、非人間性、そういったことを考えさせる。性同一性障害者を身近(家族、親しい友人など)に持つ人にこそ見てもらいたい映画だと思う。
ボーイズ・ドント・クライ [DVD]
見るまではもっと古い時代背景かと思いました。100年以上前とかそのくらいの。しかしまだ20年も経ってない実話なんですね。実話なら本当に女性と気付かなかったのかなと疑問に思うけど、多分事実はこのように淡々と冷酷に進むんだろうなと、それだけに事実の重みをズシンと感じる映画でした。