TOP OF THE POPS
サザン及び桑田さんは、小学生の時からリアルタイムで体験してて、いつでも自分の人生のすぐ近くにその存在を感じていたので、今まで気付かなかったんですが、この人、恐らく近い将来、全世界的に評価される人になるんじゃないかと密かに確信している。
これだけの長期間にわたり、これだけのクオリティを保つ作品をコンスタントに発表し続ける人物が世の古今東西を通じていただろうか。僕が知っている範囲でそんな人は彼とスティービーワンダーぐらいのもんじゃないかと思う。
適当にソロ活動の作品をブチ込んだだけのアルバムであるにも関わらず、聴いていると何気にそんな事を感じさせるんだから、やはり彼は只者ではない。
ベスト オブ ベスト~ALL Singles Collection
90年前後のバンドブームが下火になる頃、代わって現れたZARD・WANDSを筆頭とするビーイングブームが92-93年に吹き荒れた。彼らの共通点はビーグラムレコード会社に在籍していた事や織田哲郎を頭とする有能なブレーンに支えられていたという事だ。それ故に特にサウンド面において彼らには何かしらの共通項を見出すことができる。
勿論、大黒もまたこのレコード会社に在籍していてサウンド面でも類似性を感じたが、同ブームにおいてZARDと共に紅一点的な存在だったために、異彩を放っていた。更には、「DAKARA」のような80年代中期を彷彿とさせるようなダンスサウンドを楽曲に混ぜ込む事で、当時80年代ディスコブームを知らない若年層に新鮮さと興奮を与えたのも事実だろう。加えてビーイングに共通する古来の邦楽的美メロを軸とする親近性あるサウンドとは対照的に、男性に対して圧倒的な主導権を持つかのような強気な女性を歌詞に含ます事で、更にこのブームにおいて一線を画していた気がする。同時に、上記のダンスサウンド故の強烈なビートを伴うドラムと腹の底から鳴るベースが更に強気な女性としての歌詞の迫力を高めた。当時は、ブラックタイプミニコンポがとてつもない流行を呼び「重低音ボタン」なるものが大抵付属していた。それを頻繁にオンにしていた歌手こそ大黒だった。
ビーイングブーム系歌手といえば、とかくそのお祭り的なノリが当時先行されがちだったが、彼女の曲を良く聴くと卓越したボーカル力を再認識されるのだ。メジャー以前からライブハウス等で下積みを経験していたと聞いた記憶がある。また、ブラックサウンドにルーツを求められそうな雰囲気もある。そのような経緯は、DEENにも言えることだ。
イメージ先行なビーイングブームの中で、織田・栗林系の美メロは言うまでも無いが、彼らの知られざる歌唱力に目を向けるのもまた良いかもしれない。
アウトレイジ [DVD]
私はヤクザでもないし、知り合いにヤクザもいませんので、本当のヤクザという人たちの事は分かりませんが、この作品は、「庶民が抱いてるヤクザ像」に限りなく近いヤクザ映画だと思う。
乗ってる車も、黒塗りベンツだけじゃなく、プレジデントだったり(シーマかな?)、セルシオ(初期型)だったり、イロは、マークXに乗ってたり、すごく細かいとこが妙にリアルなんです。
だから、MP5K(銃の名前です)が出てきても、なんの違和感もなく、「今のヤクザはほんとに使ってるかもしれない」という錯覚をおこさせる。
カンヌでは、ブーイングだったそうですが、初期の北野武の作品(海外で評価される以前の作品)が好きな私は、この作品は星5つです。
なんで、最近の北野監督の作品は観てないのがありますが、スコープサイズの活かし方、うまいですね。なんか、タケシとならんでソファーに座ってる感覚になる感じ。
賛否両論は、はっきり分かれると思いますが、私的には、北野映画で「その男」の次にきますね。
最高です。
全思考 (幻冬舎文庫)
いままで、北野武としての本はいろいろと
ありましたが、ここまで素の武さんは、あまりなかったかと
思います。本当にあっという間に読めました。
北野武さんの哲学を100%味わえる本です。
本の構成は、武さんが、よく行く小料理屋さんの主人の「くまさん」
と、武さんが、「一杯飲みながら、淡々と語るように」進みます。
武さんが、お店でなかなかトイレからもどらなくて、どうしたのかと
おもって、行ってみると中からゴソゴソ音がして、のぞいてみると
トイレ掃除をしていたなどのお話や、誰でもピカソに、
綾小路きみまろさんがゲストで来たとき、本当にうれしそうにしていて、
番組ででてきたワインをガンガン飲んでしまったり、でも結局それは、
昔の売れないころのライバルだったきみまろさんとの再会を本当によろこんで
いたからだ、という話など、「くまさん」から、素の武さんの様子が語られて
いて、改めて武さんの魅力を感じることができました。
現在の日本で、やはりこのように自分なりの哲学、目の前の損得ではなく、
筋を通す生き方をしている人は少なくなってきているのではないかと思います。
一気に読んでみて、自分の生き方を考え直すいいきっかけになりました。
なぜ、はたらくのか―94歳・女性理容師の遺言
関東大震災や大東亜戦争を生き抜き、高度経済成長、バブル崩壊と、日本の変遷を床屋という、市居の市民が集う場所で見つめ続けた、一女性の独白‥‥‥というほどに重くはない、近所のおばあちゃんのお小言という趣が、寿賀さんの人柄を良く現しているように思う。
平成の御代の日本人が忘れつつある、もしくは既に無くしてしまった勤労観、倫理観が、寿賀さんをして94歳まで働く原動力になっていたのだという事が、綴られている(正確には語られている?)言葉の端々から滲んでいる。
「端を楽させるため」、だから「はたらく」。
実践出来ていない自分自身に忸怩たる思いを抱えると同時に、混迷の中、就職する事に苦心惨憺の若人や、これから社会へと巣立つ中高生は、是非とも本書に目を通して欲しい。
また、日々の生活や仕事に悩んでいる人は、書籍冒頭の寿賀さんの笑顔、そして曲がった背中でお客さんの髪を切っている姿、それらを眺めるだけでも色々な事が感じられるのではないだろうか。