藤十郎の恋・恩讐の彼方に (新潮文庫)
文豪・菊池寛の粋を集めたような魅力的な短編集。
人間の不条理さ、弱さ、そして強さを切れ味鋭く描き出してみせるその筆致はさすが!
表題2作はもちろん(実に対照的な)名作ですが、
個人的には「俊寛」が面白い。
あの歌舞伎でも有名な”悲劇”を、こんな風にひっくり返してしまうなんて!
(詳しく書くとネタバレなので止めますが)いや〜、お見事です。
恩讐の彼方に・忠直卿行状記 他八篇 (岩波文庫)
「忠直卿行状記」が読みたくて再び購入のうえ再読した。かつては指導者の孤独感に共鳴したものだが、いま読み返すとまた違った読後感をもつにいたる。すなわちそれは日本人の古くからあったんであろう病理的欠陥を見た次第である。これは読み手によってさまざまであろうから断言はできないが、明らかにいえることは、こうした古典的名著には何度読んでもそのときどきに感じ方を味わえるということであろうか。行き詰まっては読んでみて、あらたな発想をもうけるという繰り返しによって、すこしは人も成長するのであろうか。なにしろ読まないことには始まらない。新たな視点などだれも教えてはくれないのである。なにが新しいのかは自分しか知らないのだから。
記20070915