たまゆらり (実業之日本社文庫)
SF、オカルト、異常心理、タイムスリップ、ストレートな哀感の残る幽霊譚、そして、神秘的な最終話と、作家の目線で奇怪な出来事に遭遇するシチュエーションで様々な物語がオムニバス的に展開します。
純粋な怪奇を好む人には「うたがい」などはSFと感じてしまうかもしれません。話の筋も、藤子・F・不二夫の「どことなく、なんとなく」に似ているので、オチも同じか、と思っているとそうやとんやは下ろさない。
意表を突く発端、中途のサスペンス、意外な結末+余情(読者の想像をかき立てるもの)、という小説の大前提をこれほど全ての短編において忠実に守っているのも珍しい気がします。
その為には主人公の作家自身が殺人鬼になることもいといません(驚くべき方法でこれは無に帰するわけですが)。
個人的には遠野で20年前に記憶を失って発見された男が再び遠野を訪れて真実を知ることとなる最終話がオススメです。
まるごと!東京魔人學園伝奇
手に取った時は「ちょっと薄い?」と思ったのですが、読んでみるととても楽しめました。
キャラの通信簿(しかも形式は割と真面目)なんてファンブックに載せるゲームは魔人ぐらいだと思います。
描きおろしのイラストも多めです。
記事量的には剣風帖>外法帖の感じがしました。
内容は大体
・魔人ゲーム・CD等の一覧年表
・剣風帖キャラの通信簿
・性格診断/外法帖(アンケートに答えていくと、あなたはこのキャラタイプ、というものです)
・アンケート結果(人気投票・恋人にしたいのは?等)
・制作サイドへのインタビュー記事
・お遊び企画の新作紹介(RPG風等のゲーム紹介で描き下ろし有りです)
・キャラの描き下ろしタロットカード
です。
当然、魔人シリーズを知らない人にはあまり価値のない本ですが、アンケートあり、お遊び企画記事ありで
ファンなら楽しめると思います。
ノロイ プレミアム・エディション [DVD]
実在した怪奇ドキュメンタリー作家が失踪直前に完成させた作品に基づく、という体裁を取っているので、全篇に亘ってハンディカムを駆使した、ドキュメンタリータッチになっています。ここで、誰もが思い出すのが「ブレアウィッチ・プロジェクト」だと思いますが、緊張感と完成度は、断然本作のほうが上。怖さも「ブレア〜」よりも怖かった。
たしかに、脅威を齎す存在が直接描かれるよりも、現実で説明はつくけれども不気味としか言いようのない出来事が、どんどん続く方が怖いし、日本古来の風土を盛り込んだ内容は、独特の不気味さを醸し出し、フェイクと判っていながらも見所はあった。だけど、残念なのは、呪いの正体と対峙した時からクライマックスまでの怒涛の展開とその描写が、ありがちな恐怖映画にしてしまっているのだよね。惜しい!!
とまれ、最近の「リング」「呪怨」を代表とするジャパニーズ・ホラーとは趣の異なる恐怖を描いたということでは見事だと思います。ちゃんと納得できるバック・ストーリーがあって、超常現象も起こり、観客が薄々予想、期待(?)している悲惨な結末へと至る。話が破綻していないところも大したもの。あと、ドキュメンタリー・タッチを活かすため、出演者の名前はほとんどが実名だったし、エンド・クレジットなしで、突然終るというのも凝っていてよかった。
帝都物語 [DVD]
説明の必要もないほどの有名伝奇小説の劇場版!!
CGのない時代に実物大の昭和初期の東京銀座の町並みをセットで表現したり
有名俳優さん演じる明治〜昭和の著名人が多数出てきたりと見所いっぱい。
特に一押しは幸田露伴=高橋幸治さんと西村博士=西村晃(博士の息子さん!)ですね。
帝都地下改造計画、学天測、陰陽道、地下鉄建設など、
オカルトや日本近代史が好きな方にはたまらないイベントがいっぱいです!!。
そしてオカルト架空人物として日本最強の人物の一人、加藤保憲が、
これまたはまり役の嶋田久作さんに演じられて初登場!
清々しいほどのカッコよさです!!
たった一人で帝都を縦横無尽に魑魅魍魎を使って暴れまくります。
果たして人々は加藤の野望を食い止められるか否や!?
惜しむらくは尺が少なくて原作(1〜4巻の部分)の
ダイジェスト版になってしまった感じがあります。
初めてごらんになられる方は「なんじゃこりゃ!?」と思われるかもしれません。
まず、原作の小説(あるいはアニメ版帝都物語)をごらんになって
視聴されることをお勧めします。
帝都大戦 [DVD]
前作「帝都物語」は原作の圧縮版というか、
原作を駆け足で観ていく作品でしたが、
こちらは「初見でも楽しめるように」と気遣って作られたようにも思えます。
当時では分かりにくい「陰陽道」を超能力に置き換え描写しています。
ただ、加藤の五芒星の手袋などは印象にのこるように描写されています。
その辺りで「見えないけれど式神を使っているのだろうな」とか、
脳内補完で何とか。
また、サントラの曲名で
「復活−怨霊たちの慟哭−」「この身,我物にあらず」という感じのタイトル曲があるように、
この大戦での「加藤保憲」自体はナレーションでも語られますが、
戦争で死んでいった人間の怨念を「憑依」させているのではないかなと思わせます。
だから台詞もあまりなく、ただただ破壊し呪うだけの存在になっているのかと。
ラストはあっさりしていますが、噂だと加藤と一個小隊のバトルも予定されていたとか。
その辺りもあればもっと派手な作品になったと思います。