逆説の日本史13 近世展開編 江戸時代鎖国の謎 (小学館文庫)
本巻は主に家康の対キリスト教・外交政策から綱吉の生類憐みの令までを採り上げる。
キリスト教という不寛容になりがちな一神教の日本への浸透を防ぐために鎖国も止むを得なかったが、やがて官僚主義+日本人の歴史に学ばない癖が、いつの間にか鎖国を祖法化し、幕末の日本外交を混乱させたこと(祖法というなら家康の外交は開放政策だった)、そもそも鎖国は幕府の政治決断ではなくなし崩し的にできた体制であった等、江戸幕府初期の政治を語りながら、今に通じる日本人の外交下手や問題先送り癖を指摘し、現代人が歴史から学ぶべきことと歴史を長いスパンで捉える必要性を指摘する筆致は鋭い。
国内政治の最大の課題は、武士のリストラであったが、幕府は失業問題に何とか対処し、平和が恒久化して長子相続制の確立や武士の官僚化が進み、トップ(将軍)は飾りでもよいとする日本的な発想が顔を出す。そこに登場する将軍綱吉は暗君ではなく、戦国の遺風を根絶した名君だとは目から鱗だ。
茶の湯、歌舞伎の誕生、儒学の日本的変容といった文化面の解説も面白い。茶の湯の変質編だけは秀吉対利休の話が主だが、大徳寺山門事件以外の事件を初めて知った。
ところで、本巻は、前巻から2年ぶりの刊行。以前のように年1作のペースを望む。
世界が愛した日本
既に知っている話、あるいは初めて聞く話など、いろいろありますが、この本によって日本と世界の国々との間の感動的な交流のエピソードと出会う事ができます。
しかし日本に好意を持ってくれている世界の人々との関係も、定期的にメンテナンスしていかなければ、錆びれてしまうことになります。
以前から、世界でもっとも親日的な国と言われていたトルコですが、日本に送ったトルコ建国の父、アタチュルクの象が横倒しになって放置されている事がトルコの新聞でも掲載され、親日感情に水をさしていると聞きます。
あるいは、イスラエル人は、「命のビザ」を発給した杉原千畝だけでなく、東条英機にも感謝しているという事実をご存知でしょうか。
民間でできる、異国との交流にはどうしても限界があります。外交官の方々が、こういった歴史の影に埋もれたエピソードを積極的に掘り出し、それを踏まえた上での外交を展開することで、日本を応援してくれる国々が増えていくことを願ってやみません。
逆説の日本史17 江戸成熟編 アイヌ民族と幕府崩壊の謎
まだ半分しか読んでいないが、アイヌ史を日本史の重要部分として取り上げる視点に賛同する。司馬史観から、あるいは井上ひさし作品でこてんぱんにやっつけられる松前藩のアイヌ仕置きを複数のアイヌの立場から見ているのが新しい。後半も楽しみだ。