超高層ホテル殺人事件 [VHS]
森村誠一原作の同名小説の映画化。ただ内容は本格ミステリーというより犯人側のラブストーリー。近藤正臣と由美かおるの悲恋物語となっているがホテルでの落下殺人、飛行機を使ってのアリバイ作りは残されている。由美かおるといえば彼女の二十代の若々しいヌードが拝める。
悪道 (100周年書き下ろし)
最近はあまり切れがないように感じた森村氏の作品でしたが、本時代小説は際立って出来が良いです。
のっけから大胆構想を持ちだし、その秘密を知る侍、その秘密で幕府を牛耳ろうとする輩たち。どんどん加速していくエンターテイメント作品に仕上がっています。
森村作品でよく使われている旅先でどんどん仲間が増えていくという点は気になったが、それにしてもラストまでしっかり丁寧に感情の描写の仕方まで、少しずつ変えていく辺りはさすがである。
実に心地よく楽しませて頂きました。ありがとうございます。
人間の証明 [DVD]
昭和51年、犬神家の一族で映画産業に参入した角川映画第二段。日本映画は完全な斜陽で、「何を今更」という声と「角川なら何かやるかもしれない」という期待とがあった。
本作は、ベストセラーになった小説の映画化。「読んでから見るか、見てから読むか」というコピーは大流行となった。もちろん映画自体も注目を集め「ストウハ」「僕のあの帽子どうしたんでしょうね」なども大流行。釣られて西条八十の詩集を買い求める人が増えたりもした。
思い出してみれば角川映画。その後も「かいかん」や「お父さんを殺しに何かがくるよ」(コピー、やや不正確)など、爆発的ブームになるコピーを生み出している。映画を見ない人もコピーに釣られて映画館に出かけることもあった。そういう意味で「角川映画」のした役割は確かに大きい。
さて、四半世紀ぶりに見る本作。映像の作り方などに古さは感じるが、それは「陳腐」に感じる古さではなく「懐かしさ」に通じると思う。有名俳優の若き姿を見ることができるのも楽しみだ。「ハリウッドプライス」と言わないまでも、もう少し価格が下がってくれれば「必見の一作」扱いなんだろうけれども。日本映画のマーケットの狭さが残念ではある。
人間の証明 (角川文庫)
大ベストセラーになったり映像化されたりした有名な小説は、今更なかなか読む気持ちに
なれず、結局読まずじまいでそのままになってしまうことも多い。
この本も私にとっては、ずっとそんな存在だった。
先日「NHKその時歴史が動いた」で江戸川乱歩が取りあげられていた。その番組内で
インタビューを受けていたのが森村誠一さんだった。インタビュアーの質問に対し、
的確にそして何より誠実に言葉を選んで語っているように感じ、その人柄と言葉を使う
作家としての居住まいに惹かれた。
そしてそれが本を手に取るきっかけとなった。小説の吸引力及び著者の魅力である。
「母さん、僕のあの帽子、どうしたでせうね?」という西条八十の詩集を遺した黒人は、
一体誰に殺されたのか? 幼少時の経験から人間不信に陥った棟居刑事が事件を
担当し、子を思う母の人間性に賭けて事件を解決に導く。
棟居刑事が追う黒人殺人事件解明、妻をひき逃げされた夫が妻の不倫相手と協力して
進める犯人探し、逃げる犯人に家庭環境についての述懐、この三つを軸に物語は展開
していくが、妻、夫、母、父、子、また不倫相手といった様々な立場にある人間の心理や
本音が細やかに描かれており、単なる推理物でなく人間模様を描いた作品としてとても
深みがある。
被害者がスラム出身であったため、海外の社会事情や操作体勢も詳しく描かれており、
事件が明るみに出るにつれ、棟居のトラウマとなった事件にかかわる人物がわかったりと、
本筋を支えるエピソードも大衆小説の旨みを充分味わわせてくれる。
人間の証明 DVD-BOX
脚本、俳優、演出、音楽の全てが素晴らしいドラマでした。
豪華俳優陣もあくまで役柄に合った人を選んでいて好感が持てました。
特に主演の竹野内豊さんは、心を閉ざした寡黙な性格ながら刑事という
職業がらセリフ自体は多いという難しい役を見事に演じ切っていました。
ドラマの中で何度も出てくる彼の詩の朗読は、見終わった今でも頭から
離れません。彼や敵役の不幸な生い立ち、被害者男性の悲し過ぎる死、
「自分の人生こんなハズじゃなかった…」と言わんばかりの顔で次々と
現れる登場人物など、視聴率的に振るわなかったことは何となく納得
できてしまうのですが、そういった周りの雑音を気にせずに、最後まで
そのスタンスを貫いた製作陣は本当に素晴らしいと思います。
そんな暗い雰囲気の中でも、行方不明の妻を追う車イスの夫と愛人役の
國村準さんと風間杜夫さんは、悲しいながらもコミカルさを漂わせており、
そのやりとりがまるで「スター・ウォーズ」のR2D2とC3POみたいでつい
思わず含み笑いしてしまう場面が多々ありました。重いテーマを扱った
作品の中で序盤から中盤にかけて良いスパイスになっていますので、
ジャンル的に敬遠している人も結構楽しめるのではないかと思います。
こういった「作品」と呼ぶにふさわしいドラマがほとんどないといっていい
昨今ですから、同じ俳優陣が揃うのであれば続編も期待したいです。