パプリカ [DVD]
アニメーションでしか創れない世界。アニメ大好きな者たちは、未知の体験を求めている。
原作は製作者の内部を喚起させる触媒。
新しいアニメの世界をつくりだし、とにかく、生まれて体験したことなのい奇妙な世界にいざなってくれたらいい。
この期待に十分こたえてくれる。
予想もしなかった ゾクッとする体験。
アニメでしか創れない。大人っぽく かつ優雅な、時にはエロテックな 美しい映像の氾濫!
先駆者への パロディー。
作者の不敵な挑戦というべきか。凄いとしかいいようがない。
饒舌な原作に触発され、
かつ昇華し、かような仮構世界をつくりあげた諸氏に敬意。
東京ゴッドファーザーズ [DVD]
前2作「Perfect Blue」「千年女優」で高い評価を得て実績を積み上げた今敏監督の力量が遺憾なく発揮された快作。
ホームレス・家族崩壊・捨て子といった重いテーマを素材としながらも、テンポのいい展開と軽妙なギャグで笑いを誘い、構えることなく娯楽作品としても観ることができる間口の広い作品。登場人物の心理描写も見事で、親しみを持ちつつ物語を追っていける。
アニメという虚構の中で東京という現実社会のウラにある病巣を映し出し、リアルな筆致で非現実的なまでの偶然の連続を描き出す、この倒錯感がたまらない。ストーリーはアニメらしい単なるご都合主義の乱発かと思いきや、実はしっかり伏線が張られた「意味のある偶然の連続」が物語を織りなしていて、クライマックスに向かって収束していく。
タイトルが一般受けしないのが本当に惜しい。一瞥しただけではどういうお話なのか想像がつかないのだ。かといってひとことで説明できるほど単純な内容ではないので、これは一度なんとかして観ていただくほかはない。
今監督らしく絵や音楽のクオリティは当然のごとく高水準で、いくつもの見方ができる多面的・重層的な密度の高い構成。これまでの作品と同様、何度も繰り返して観たくなる作品に仕上がっている。観賞後の後味も爽快で、誰にでも安心してお勧めできる一品。
パプリカ [Blu-ray]
内容は原作とはまるで別モノです。ですが、筒井康隆さんの独特のケレン味や五七調の台詞など、あの文章から滲み出す世界観がきっちりと息づいています。同年公開された『時をかける少女』も大傑作だと思いますが、筒井康隆さんらしい作品、という意味ではこちらが上かと思います。今敏監督という映像作家の手によって、見せるエンターテイメントとして生まれ変わったと言えます。今敏監督作品としては、「千年女優」の騙し絵の感覚に近いので、あの作品が好きな人にはお勧めします。ただし、狂気とかブラックユーモアが苦手な人は避けて下さい。かなり満載なので…。
新装版 海帰線 (KCデラックス)
連載から21年の時を経ているにも関わらず、秀逸さは現代の漫画をはるかに超越している。ストーリー、描写のクオリティの高さは改めて著者のもつ技術の高さを感じさせられた。
セラフィム 2億6661万3336の翼(リュウコミックス) [コミック]
押井守・今敏両氏の合作であるこの作品ですが、
今氏のサイトによると、どうやら途中から色々あって今氏の主導で話を進められたようですね。(笑)
残念ながら未完となっていますが、思った以上にキリの良い所で終わってくれていますし、
その辺はあまり気にせず、存分に楽しめる内容だと思います。
逆にむしろその描かれなかった部分も余白となって、こちらの想像力を刺激して来さえするような。
展開的にも前半部分は、押井氏らしい少々衒学的な説明が多いですが、
途中からは、今氏主導の割とエンタメ色の強い展開になって行き、
前半部分の緻密で骨太な設定が伏線となって、それが回収されていく様は非常に小気味良いです。
作画に関しても、今氏のその正確で精巧なデッサン力に唸らされます。
自分は今氏の漫画家としての活動を存じ上げていなかったので、
「この人こんなに絵が上手かったのか!」と。
確かに、最後まで描かれなかったことは残念ではありますが、
読み終わった後もまだ物語が続いている感覚が確かに胸に残り、
今氏の残思が永遠にそこに漂っている気さえします。
少し大げさな言い方になったかもしれませんが、
どうか興味のある方はぜひぜひご一読を!
どっぷり近未来SFの世界に浸れますよ!