魅惑の仏像 阿弥陀如来―京都・平等院鳳凰堂 (めだかの本)
西村公朝さんが阿弥陀様の目の位置から実際に周囲を見て、壁板の絵画の仏様が大小に描き分けられている意味を発見したというくだりに、鳳凰堂の空間創作の見方が広がった。阿弥陀様を直接見ているが、掲載写真のように多角的にじっくりと見ることはできていなかった。小川光三さんの鳳凰堂撮影失敗談や撮影最適時の割り出し解説に、撮影の苦労が推し量られる。だけど、一般参観では見られない瞬間を体感できることはすばらしくてうらやましい。伽藍復元図にある小御所に起居し、冒頭見開きの池に映えた浮き上がる夢幻の鳳凰堂に対面すれば、正に浄土世界に生きながら迎え入れられている自分に感涙したんじゃなかろうか....「雅やかな阿弥陀如来像」(西川杏太郎)からは平安期の極楽浄土へのあこがれと阿弥陀仏信仰の広がりが理解でき、定朝作丈六阿弥陀如来座像他の鑑賞ポイントが参考になる。「寄木造の技法と工程」(山崎隆之)の一文は素人にはとっても分りやすい。木村恭道さんの沿革史から平等院の変遷の数奇さに興味が深まる。
平等院鳳凰堂―よみがえる平安の色彩美
平等院鳳凰堂建立当時の彩色をCGで再現…実に見応えがある。
実際我々が現存する往時の建築物を一見した所で、今では
枯れてしまったその色合いから時間経過の長大さを感じる
のが関の山なのだが、その感覚をこの一冊は楽々と吹き飛ばしてしまう。
この色彩こそは、往時の人々が望んだ浄土の姿なのだろう。