花の嵐―小説小佐野賢治〈下〉 (光文社文庫)
ロッキード事件にかくれて小佐野賢治のあまり知られていない血も涙も花も実もある再建王としての偉大さや経営者としての魅力を描きます。下巻の時間軸は昭和39年の高度経済成長華やかなりし時からロッキード発覚直前までとなっています。一番残念なのは東芝を建て直した土光敏夫、佐世保重工を建て直した坪内寿夫と比べて、従業員との人間的な交流、ぬくもりを大切にし、大量首切りはなし、株式を100%引き受ける、賃下げや労働強化を行わず、小佐野の本体である国際興業からは役員は2人しか送り込まず、もとの経営陣は残留にもかかわらず、つぶれる寸前の会社を再建してしまうという信じられない会社再建の手法を具体的に描いている部分がほとんど文中から読み取れないところです。著者の筆力があるがゆえにどこまで取材がなされたかがわかってしまう悲しさがあります。しかし、主人公の小佐野になったつもりになって事業を拡大していく経済小説の醍醐味は失われておらず、下巻のホテル買収の「仕手戦」の場面は思わず手に汗を握ってしまいます。上巻から続けて読むと一層味わいが違ってきます。
梟商―小佐野賢治の昭和戦国史
東北に嫁いだ従姉妹の仲人さんでした。
まだ小さい私は歴史に名を残すような人だとも知らずに
「どこかで聞いたことのある名前」でしかありませんでした。
そんな親近感から手にとったのですが、木下英治さんが手がけるだけあるノンフェクション物として読み応えのある内容です。
後々この本を読んで驚きました。
怪物といわれるが故の、政商を背負って生きた男の軌跡です。
政商―昭和闇の支配者〈2巻〉 (だいわ文庫)
ロッキード事件は、僕が高校時代の事件。田中角栄や小佐野賢治などの名前が、新聞紙上に舞っていましたが、当時は余りよくわからなかった。
戦後、企業の乗っ取りからやがて財界のボス的な存在になっていく小佐野の力は、やがて政界にまで伸びていくことになる。
最近では、ライブドアのホリエモンが、この種の問題と同一視されていたが、政界とのより深い癒着構造を知ることができる。
ロッッキード事件は、関係者の死から全貌が明らかにされないままに終わってしまったような感じを受けるが、戦後の政界と財界間の癒着の構造を知ることができる書です。