ザ・スーパー・セッションII [DVD]
嫉妬するほどうらやましいフレンドに囲まれたデビッド。
心配する必要の無い完璧なセッション。
きらびやかなデビッドのサクスフォーンの音色に酔いしれると同時に、クラプトンのギターが鳴り響き、リッキーのナローなバッキングに心を打たれます。
Silver Pony
ジャンルを超越した選曲センス等「型破り」なイメージのある彼女の作品には珍しく、スタンダードを中心とした構成ながらも
中々の好作だった「Loverly」から2年半、待望の新作の登場だ。ここ数作プログラミングを導入する等新たな方向を模索す
る一方、肝心の作品の質が今一つの印象だった彼女だが、久々に心底楽しめる作品をドロップしてきたという印象。
題にも示した通り、1・2曲目は前作にも収められていた曲のグラナダでのライヴ音源であり、他にも欧州ツアーでのライヴ
音源を複数収めている。残りはニューオリンズでのスタジオ録音であるが、「Beneath a Silver Moon」ではRavi Coltrane(ts
)、「Watch the Sunrise」ではR&B界のスターJohn Legend(vo)をゲストに招き各楽曲に華やかな色を添えている。
しかし何よりも本作の特徴は、ライヴ録音曲を中心とした各バンドメンバーの卓越したプレイが前面に押し出され、従来の彼
女の作品以上に他の楽器にたっぷりしたソロ・パートをあてがい、様々な楽器による演奏を聴ける楽しみが詰まっている。
例えば「Saddle Up My Pony」での冒頭3分にも及ぶReginaldによるブルージーなギターソロ・パートの渋みと味わい深さ、
冒頭「Lover Come Back to Me」で聴ける、前作のスタジオ録音とは別曲のようなHerlim Raileyの気持ち良いブラシ音とスピ
ード感あるドラムプレイ、Jonathan Batisteによる長尺のソロ・パートでの演奏の熱狂振り等、今回一部メンバーを入れ替え
たという彼女の新形態バンドのお披露目の様な内容になっている。どの曲も前作よりも数段面白さを増しているのだから凄い。
一方スタジオ録音ではStevie Wonderのクラシック「If It's Magic」の美しさに惹かれた。原曲はボーカルとハープのみという珍
しい構成だが、あの夢見るようなハープの音色をMarvin Sewellによる温もりあるギターとJonathanのたゆとう様なピアノの
音色で見事に再現しており、それらに濃厚に絡むようにゆったりと言葉を刻みこむCassandaのボーカルが絶品だ。
スタジオ・ツアーのライヴ音源が交互に自然に流れていく贅沢な1時間。本作を聴いて感じたのは、やはり彼女の深みのある
土臭いボーカルには、生楽器による手造り感溢れるサウンドが一番嵌るということ。近作での挑戦的な作風よりもリラックス
感が漂い、初期ブルーノート作品との凄味溢れる感触とも違う、正に現在の彼女の姿を見事に捉えた傑作だ。
Blue Light Til Dawn
1993年作品。ひたすら深く沈み込む声と音楽の凄みに圧倒される。
カサンドラ・ウィルソンは米ジャズ・シンガー。年齢からすると既に大御所に入りつつあるが、ジャズの範疇に留まらない幅広い
ジャンルからの選曲やプログラミングを導入した作品を発表したりと、常に新しいことに挑戦する姿勢は素晴らしい。
本作は、彼女が十代の頃慣れ親しんだフォーク・ブルースのカバーを中心に構成されたもので、次作「ニュー・ムーン・ドーター
」と共に彼女の代表作に挙げられる作品。個人的には最も好きな作品だ。
何より素晴らしいのがカサンドラの個性的な声だ。彼女の声を初聴で聴かれる方は男声かと感じられるかもしれない。しかし低
域でうごめく、チェロの音色のように彫りの深い声には官能的なオーラが宿り、一度惹かれたら離れられない魅力を持つ。
また本作でプロデューサーのクレイグ・ストリートが用意した音楽がまた秀逸だ。基本ギターを中心としたピアノレスの構成だが
、曲によってヴァイオリン・アコーディオン・パーカッション隊等を適宜加え、全体的にささくれ立った感じだが、実にリズム豊かな
作品に仕上がっている。
冒頭の「ユー・ドント・ノウ・ホワット・ラヴ・イズ」で奏でられる、文字通り「ブルー」なギターの前奏とカサンドラの陰鬱な歌い出し
が、ガラリと場の空気を変えてしまう。「チルドレン・オブ・ザ・ナイト」での、黒人音楽のルーツを見るような呪術的な雄叫び声と
躍動的なパーカッションは、思わず本能を刺激され血がたぎる。意表を突くのはジョニ・ミッチェルの名曲「黒いカラス」のシュー
ルなアレンジ。挿入されるカラスの声らしきパーカッション音と、自在に飛び回るクラリネットの旋律が独特。終曲の「アイ・キャン
ト・スタンド・ザ・レイン」はカサンドラとギターの2重奏。雨によって喚起される苦い過去に激しく苦悩する主人公を、カサンドラの
情熱的な歌と激しく掻き鳴らされるギターが絶妙に表現する名カバーだ。
驚く程暗い色で統一された作品だが、彼女の声の魅力が全開となった名作。未聴の方は試聴をしてみては如何だろうか。
New Moon Daughter
良いステレオを使っている方ならわかると思いますが、
録音が恐ろしく良いです。
腹に響く重低音から、伸びる高音まで、信じられないほどクリア。
この録音を土台にして、カサンドラの
これでもかというほど魂のこもった歌声があふれ出します。
ジャズ的な歌い方ですが、ジャンルとしては
ジャズというよりポップスだと思います。
激しいスキャットはありませんし、アドリブ合戦もありません。
まあ、そんなことはどうでも良くなるほど魂のこもった
本物の音楽です。いちおし。