ストレイト・ストーリー [DVD]
「リンチ的」作品(映画もTVも)は、普通、ストーリーに
着目して、「わけわか」と評され、好き嫌いも分かれますね。
でも、この映画は、お話がシンプルなだけに、観る前は
どんなに退屈なのか、と思っていました。
しかし、観た後は、うれしい誤算。
実は、リンチの真骨頂は映像詩人なところだと気がついていた
ファンも多かったと思います。
この作品では、歩くに等しい速度で旅をする主人公と、観客も一緒に
旅をしているような雰囲気を、さまざまな風景の映像と自然の音を
効果的に組み合わせて、映像的な叙情を醸し出しています。
ただ、リンチが、なぜ、実話に基づいた、このシンプルな逸話、
埋もれてしまいそうなお話を、あえて映画化したいと思ったか
は、ワタシなんかにはわかりませんが。
リチャード・ファーンズワースも
シシー・スペイセクも、その他の登場人物も、
演技らしくない自然な振る舞いが
の映画の無常観をひきたてています。
とにかく、異色なリンチ映画です。
ストレイトストーリー [DVD]
アメリカお得意のロード・ムービー、、、ではあるのだか、この映画はちょっと様子が違う。移動ツールはなんと時速8kmのトラクター、ここにこの映画のコンセプトが集約されている。
驚いたことに監督は、な、なんとデビッド・リンチ。「揺れる魔球」投手の彼が、今回は「ストレート」で真っ向勝負する。
ともすれば偏屈で自分の世界に閉じこもり勝ちな老人、そんな一人の老人が、10年前に仲違いをして以来会っていない兄に会いに行く。視力が落ちて自動車の運転ができない、でも自分の力で病気の兄の見舞いに行きたい。そんな状況が老人をトラクターの運転に駆り立てる。意固地な老人の話と言ってしまえばそれまでなのだが、彼の行動はそんな思いを吹き飛ばすほどにひたむきだ。
500km余りの行く手を阻むかのように待ちかまえる苦難の数々。道すがら出会う人々や彼の娘のエピソードなどを交えながら、時速8kmで物語は進む。果たして兄はまだ生きているのか、無事に兄のもとにたどり着き和解することができるのか、、、。
今までスタントマンとしてくらいしか、ほとんど映画出演の経験がないというリチャート・ファンズワース(当時80歳、すでに故人)がストレイト老人を淡々と、しかし熱演。特典映像ではリンチ監督やこの老優の味わい深いインタビューが見られる。この老人にしてこの演技、映画の成功が単なるフロックでないことが良く分かる。
見終わった後、世の中に根っからの悪人などいないような幸せな気持ちにさせてくれるのも、彼の穏やかな内面性によるものなのだろう。
思い出をつくる時間さえままならないあなた、フッと一息いれて老人と一緒に旅しゆったりとした時間の流れに身を任せてみよう。そんな時間の流れが教えてくれるもの、思い起こさせてくれるものは沢山ある。
閉ざされた人工的な都市空間の中で、昼夜の別、四季の移ろいなど、時間への感性を失いつつある私たちは、ライトアップされた明るい夜空の中に星を見出し、その美しさを味わうことができない。
星空の下で、兄と語り合いたい、、、。スローライフ老人が語る「星空」は、そんな現代に向けられたものかも知れない。
the straight story ストレイト・ストーリー
高校生のとき、図書室で借りて読みました。
村上龍氏が文章を書いていたんですね・・イメージでは無かったので少し驚きました。
絵本のような感覚でさらさらと読めると思います。
主人公のおじいさんが旅をする話なのですが、印象的だったのは旅の途中で家出した少女(恋人絡みだったような気がします)と会うシーンで、おじいさんは彼女と一緒に食べ物を食べたり少しずつ話をするんです。
少女は結局家に戻るのですがそのときの少女の別れの挨拶が曇っていた空が晴れたような、気持ちのいいものでした。
物語は淡々と綴られます。
きっと5年、10年経っても覚えていると思います。