小説の書き方 (新潮選書)
筆者の小説は読んだことはないながら、『全身小説家』のイメージで、
なんだか偏っていそうな怖そうな人と思っていました。
しかしこの本ではそのイメージを裏切り(?)、丁寧かつ誠実に小説を書く心構えを説いています。
小説上達の方法として、3冊のノートABCを用意しそれぞれに記録をつけていこう(詳しくは本書を読んでください)、
半年から1年も続ければ物語を構成する想像力が向上するだろう、という話がひじょうに参考になりました。
運命じゃない人 [DVD]
3人の人物からの違った視点で、一昼夜の出来事を叙述する。人物Aが見ている真実はBとCにはけっして見えない。他も同様。観客である私たちだけが、すべてを見通している。これはものすごく魅力的でスリリングな体験だ。
そして、たった一昼夜だというのに、誰もがさっきまでと同じ人間ではない。時間とともに人物までも徐々に変わっていく。なかでもダイナミックな変化を見せる人がいて、その意志の決断にはスカッとさせられる。
ラスト、パズルの最後のピースがかちっと音を立ててハマるとき、ものすごい気持ちよいです。めったにないものを見せてもらいました。映画というのは「見たこともないものを見せる」ことができればそれだけで素晴らしい作品だと思っているのですが、本作はまぎれもなく素晴らしい作品です。
TOMORROW 明日 [DVD]
黒木監督戦争3部作の一作目。1988年の作品。桃井かおり、田中邦衛、仙道敦子、黒田アーサー。1945年8月8日、原爆投下1日前の長崎。戦時下なれど、日々暮らしている庶民の姿が淡々と描かれている。この翌日にはあの原爆が炸裂したのかと思うとやりきれなくなります。
最近明らかになってきた話として、8/9の長崎の原爆はギリギリのタイミングで落とされたというのがあります。アメリカは原爆実験を日本でしたかったのですがソ連が8/9に参戦してきたため、日本との戦争を終結させなければならなかった。よく二発の原爆が太平洋戦争を終わらせたと言いますが、それは違って戦争が終わる前に急いで二発落としたというのが本当なのです。事実、この8/9は小倉に原爆を落とすつもりでサイパンから飛び立ったB29でしたが、悪天候のため目標を長崎に変更し、それによりサイパンへ帰る燃料が尽きて沖縄に着陸しているのです。つまりどうしても8/9のうちに落としたかったのです。これも戦争の一面ですが、勝つとわかっている戦争で新兵器の実験がしたかったのです。
本作では直接的な戦争シーンは出てきません。戦時につつましく暮らす人々の姿を映し出すことにより戦争の悲惨さを訴えています。登場人物が多く群像劇的なのですが、それぞれのキャラクターが輝いています。彼らのTomorrowを奪ってしまったのは戦争なのです。