50 Words for Snow
ロンドン郊外ベクスリヒーのシンガー・ソングライター、ケイト・ブッシュの10作目となる
アルバムはアラスカ、キャムチャッカの神話をアイディアとしたそうな・・・、雪に纏わる物語を
綴る白銀コンセプト・アルバム。
冷気を震わせ透きとおるようなケイトのボーカルと霊験帯びたピアノ音が共鳴するシンプルだけれど
厳かな前半3曲 約34分。
アレンジや音、そして語彙に工夫を凝らしやや赴きを変えプログレ的ニュアンスを取り入れ、
特にドラマティックな感情を叩きつけるエルトン・ジョンとのデュエット曲やタイトル・ソングが
圧巻な中後半3曲 約23分。
そして前半のイメージへと帰着するクロージングといったケイトらしいアルバム構成力が
心地よい起伏となって聴くものを引き付ける。
全7曲 約1時間5分 真夏にはBGMとして聴くのも良いかも・・・。
レコード・コレクターズ 2011年 08月号 [雑誌]
この雑誌を買い始めて20年近くになりますがレビューを書くのは初めてです。
この度めでたく「マッカートニー」と「マッカートニー2」が再発されポール特集が組まれました。
冒頭の解説の和久井光司氏はポールにはいつも辛口。今回の2作はツッコミどころが多いし・・・ここは我慢我慢(荻原健太さんだったらなあ・・)続く記事で普段スポットが当たらない各曲の解説はうれしい限り。もちろん今回初めて公開される未発表・レアトラックに関してもちゃんとページ割いております。関連記事その1としてポールの日本での大麻事件について・・・ポール自身が公演に乗る気ではなくわざとキャンセルさせる方向に仕向けたとの珍説・新説が。 気になる方は読んでみてください。その2としてカンボジア難民救済コンサートに関する記事もありアナログのアルバムしか出ていないイベントで活字になることが少ないので貴重。これを本格的に取り上げたらトップ記事になりますな。
その他、ジョンやジョージ、ビートルズの話題もあちこちにちりばめられファンは必読の内容です。
もちろんビートルズ以外の記事も豊富なので一度本屋さんで手に取ってみてください。
星が4つなのはポールに関するカラーページが無いこととポール特集でたまにあるポール愛皆無の「レコスケくん」が載ってない??ためです。
(レコスケくんの作者はジョージが好きなんですよ、毎回買ってる人は知ってますよね)
ディレクターズ・カット
個人的には『センシュアル・ワールド』、『レッド・シューズ』の両アルバムを嫌っていました。というのも、音の作りが刺々していたのと、曲に魅力を感じなかったためです。
さて今回、再録音をされた曲を聴きなおして私はすっかり魅了されました。まあ、人によっては『声に以前のような力を感じられないため、曲が衰えて聴こえる』だの、『何年も待たされて再録かよ』みたいな意見もありますが、『Aerial』の雰囲気、ケイトの歴史を重ねた声の温かみに満足した人には好盤です(ただ、自分も1曲目の低い囁き声には最初悪い意味でびっくりしました)。
このアルバムを買うのも躊躇されている方が多いと思われますが、それは発売形態、国内か輸入盤かの問題でしょう。
国内盤の利点としては、雑誌Strange Daysの岩本さんによる非常に詳細なケイトのデビューから今に至るまでの歴史解説、メンバー情報と山下えりかさんの新たな翻訳でしょう。翻訳は他の方が以前にやったものよりもこなれていて良いです。『UK公式プレス・リリース訳』は2ページくらいの特にありがたみのない情報なので、ファンサイトを調べた方が良いと思います。
あと、3枚組みになったものは『センシュアル・ワールド』、『レッド・シューズ』をデジタル加工する前のマスターテープからの音源をリマスターしたものだそうです。ケイト曰くエッジィな音が嫌いだったとか。こちらのタイプは買っていないので評価できませんが、アルバムを持っていない方にはお勧めかも。
とどのつまり、ケイトの詳細な歴史について興味もなく、大体のことは音楽雑誌や今までのアルバムのブックレットで知ってますって方は、マスターテープからの音源をリマスターした2枚がついた輸入盤を買うのが良いと思います。俺もそっち買えばよかった。
追記:このアルバムは大分癖になります。久しぶりにニック・ドレイクのアルバム並みに繰り返し聞きました。そして、『センシュアル・ワールド』は本当に良いアルバムだなあと、ようやっと理解しました(その次のは好きじゃないけど)。
ケイト・ブッシュ・ストーリー [VHS]
ケイトブッシュのビデオは年々手に入りにくくなっています。ベスト版とでもいうべきこのthe whole storyは、新旧ほどよくとりまとめた形になってはいますがコアなファンには選曲に疑問があるかもしれません。古いものは70年代後期につくられたビデオクリップのはずで、さすがにつくりはそれなりの古さを感じさせます。新しいファンの方は彼女の顔の若さにびっくりするかもしれません。そうです、もうあれから20年以上たってるんです。
79年に収録されたハマースミスオデオンのライブについても、もうこれ以降あのようなパフォーマンスはおそらく見られないのではと思われますからファンの方はこのthe whole storyと、live at hammersmith odeonをみかけたときにはすかさず買うべきです。
雪のための50の言葉
その昔、ケイトブッシュは私の歌姫でした。
でもイギリスにはもっとスゴイ歌姫(Sブライトマン)がいたわけで。
どうやってマーケティング的、アーティスト的に差別化したものだろーかと案じていたわけですが、
ちゃんと自分の場所を見つけて戻ってきましたな。
へんてこな踊りやロック・ポップではなくて、本人が認める「ケイトブッシュ」として。
何で自分のカバーなんかしていたのか・・・、というのも今や明白。
ケイトブッシュはケイトブッシュであるためにケイトブッシュしてみた。
そしてプリミティブな何かをつかんだ、という感じ。
大したもんだ。