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サクリファイス (新潮文庫)
自転車ロードレースを取り上げた青春ミステリ。
と言うことになっているが、ミステリーの要素は少ない。
勝つことを義務づけられたエースと、それをサポートするアシスト。
その特殊な世界をうまく描いている。
その特殊な世界では当然、選手間に確執が生まれる。
そんな中、根っからのアシストである主人公が成長していく。
確執と成長。
それに少しだけミステリーの要素が加わり、どんどんページが進む進む。
そして最後に明かされるサクリファイスの意味。
いやー、正直やり過ぎでしょう。
きれいにまとめようとしすぎ。
登場人物の性格が、ラストの結末を生むために捻じ曲げられている。
物語の展開について行けなかった。
二転三転する真相。
二転くらいで止めとけばよかったのに、と言うのが正直な感想。
「Story Seller」「同2」に番外編が載っています。
これによって少しは補完されているか。
小説にどの程度リアリティを求めるかで、がらっと評価が変わりそうな作品。
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小説 遙かなる時空の中で2 八葉幻夢譚(はちようげんむたん)
面白いのですが、ゲームよりもずっと京の負の部分が強調されていて
どの話もせつないです。
特にイサト編は重くて辛くなりました。
本編の主人公である花梨がほとんど絡まないのが
私としては残念でしたが、逆に主人公にはあまり絡まないでほしい
というユーザーには読みやすいかも?
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Story Seller〈3〉 (新潮文庫)
一冊買うとスリリングで面白い物語がたくさん入っている。
まるで「物語の詰め合わせセット」な新潮社のストーリーセラー。
本書はその第三弾。
一般的に映画でもなんでも続編とかPART 2なんてシリーズ物は回を加算ねるごとに詰まらなくなるものだが、本シリーズは全く違う。
回を重ねるごとに新しい驚きと新しい感動を感じ取ることができるので素晴らしい。
しかも参加している作家が凄く、今回はなんと、さだまさしの作品が含まれていたのだ。
こういう作品集では自分の好みにあった(自分にとって)新しい作家を見つける機会に度々めぐり合うのだが、今回はさだまさしがそのひとりだった。
シンガーソングライターの大御所であるさだまさしの小説を読むことは、これまでかなりの抵抗があった。
「ホントに小説も面白いの?」
という一方的な疑いが晴れなかったのだ。
ところが本書に収められていた作品を読んで、その話の展開の面白さとスピード感にグイグイと引っ張られ、小説家さだまさしの世界を堪能している自分を発見し、これまた驚いたのであった。
もちろん、沢木耕太郎や有川浩などの他の作者の作品も、すべてがすべて面白い。
震災、停電、原発事故と、憂鬱なニュースであふれる世の中。
読んで元気の出る一冊なのであった。
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エデン
「サクリファイス」の続編。ところどころ前作品の内容を匂わす箇所がありますが、それを気にしなければ独立した作品として読んでも差し支えないと思います。
今回は自転車競技の物語であってミステリーではないですね。
確かに前作のような展開を期待している読者には盛り上がりに欠け「エッ?これで終わり?」と感じられるかもしれませんが、私はスポーツの世界に的を絞って描いた今作もすっきりしていて悪くないと思います。登場人物たちが様々な葛藤を抱えて揺れ動きつつも、感情をむき出しにしたりぶつけあったりすることなく淡々と物語が進む感じも好みでした。
主人公・チカの人柄や競技者としての役割が、割と地味目なところがより一層この物語を興味深くしているのではないかな、とも思いました。表彰台に上がり華々しく振舞うスター選手の影にあるイロイロなドラマに改めて気づかされますよね。
大袈裟な言い方ですが、「サクリファイス」「エデン」の2作品を読まなければ、きっと私は自転車競技のなんたるやを全く知らないまま人生を終えたのではないかと思います。そういう意味でも、日々の生活には全く馴染みのない自転車競技の奥深い世界へ誘ってくれる貴重な作品と言えるでしょう。続編を希望します。
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小説 遙かなる時空の中で 花がたみ
100%満足出来ない。この手の小説は、そう言うものですが…
原作を知ってる人にとってはとても楽しめる内容。
普段、一緒に行動する事のなさそうなペアで敢えて書いていると言うのが良い。
1話目が詩紋&永泉、2話目が泰明&天真、3話目がイノリ&友雅、4話目が頼久&鷹通。
この珍しいペアだからこそ見えた、その人の普段とは違う一面…それが読めるだけでもファンにはたまらない。