「大発見」の思考法 (文春新書)
ips細胞の研究で著名な山中教授とノーベル物理学賞受賞者の益川教授。
日本を代表する頭脳を持つお二人が研究や人生を語った優れた対談集です。
おふたりとも気さくなお人柄のせいか、ご自分の成育歴や失敗まで
率直に披歴なさっています。印象的だったのはおふたりともご実家が
自営業で、ご両親の働く姿を間近で見て成長なさっていることです。
さらに、ご研究で行き詰ったときの苦悩やストレス解消法、
ご家族のことなど、世界的な科学者と言えども人の子なのだなと
思わせるエピソードが多く語られ、優秀ならざる私も
さまざまな知的刺激をこの本から得ることができました。
現在の日本の知的状況に対する批判も的確です。
「一番の意味は人によって違う」「プレゼン力とディベート力が重要」など
グローバル化する世界で生き残っていくためのヒントが
一線の研究者の目を通して語られます。
理系の研究者のみならず、広く多くの方に読んでいただきたい良書です。
夢を持ち続けよう! ノーベル賞 根岸英一のメッセージ
今年(2010年)のノーベル化学賞をヘック博士、鈴木章博士と共に共同受賞した根岸英一博士の一般向けの著書である。この本を読むとやはり一流の科学者になるべくしてなったという感じがする。ご本人は謙遜して書かれているが、子供の時から両親の過酷な農作業を手伝ったり、夕方になると近くのゴルフ場で遊んだりしながら、特に勉強をしなくても成績はトップクラスだったそうだ。そして高校時代に勉強に本腰を入れると一気にトップになり、「東大に行くしかない成績」で見事東京大学に合格したというのだからスゴイ。
本書を読んでいると根岸博士はとても器用で自信家だという事がわかる。ご自身も「永遠の楽天主義」と言っている(もちろんたぐいまれな追究心と集中力などがあってのことだろうが)。ノーベル賞受賞以前にも化学者として数多くの賞を受賞して、「趣味と実益が一致する科学者として、世間の役に立つかもしれないことを成し遂げた」、「たとえノーベル賞を取らなくても、かなりいい人生だったなと思っています」と言える人生は本当に素晴らしい。
マンガでわかる有機化学 結合と反応のふしぎから環境にやさしい化合物まで (サイエンス・アイ新書)
本書は、有機化学は暗記科目ではなく、アートだということを教えてくれる。
右ページが漫画で、左ページは説明という構成だ。説明は、必要最低限しか書かれていないので、
かえってコンパクトだ。それでいて、授業では習わなかった「へー」と感嘆してしまう
新たな知識までたまに織り込まれていて刺激的だ。絵柄が可愛らしくて親しみやすい。
高校生も大学生も楽しみながら学べる。社会人は楽しみながら復習できる。
著者は、漫画だけ読んでもいいと前書きで語っている。漫画を読んで気になれば、
左ページの説明を読めばいい。本書で目覚めたら他の有機化学の本も読むのもいいが、
できればその段階にいってほしいという。そうなってくれれば作者冥利につきるだろう。