ラリー&リー
一曲目から軽快でソロ展開も良い。話題もあってか、ギター譜も出てコピーを試みるもすぐ挫折した覚えがある。両者のソロ、音色は素晴らしく今ではフュージョンの傑作と呼べるもの。互いのオリジナルをサンプリングして素材に使うなどしているがこれも成功している。
ビッチェズ・ブリュー・ライヴ
最初3曲がビッチェズ・ブリュー録音直前、69年7月のニューポート・ジャズ・フェスでのライヴ。本来ならW.ショーターもいたはずだが、交通渋滞で遅刻して現れず、カルテットでの演奏に終始。しかし、マイルス、チック、ディジョネットの演奏が強烈で、W.ショーターの穴を感じさせない。マイルスは約25分、3曲のメドレーを披露して舞台を去ったが、その全部が収録されている。マイルスは自分の出番の後も会場に残ってスライ&ファミリー・ストーンのステージに触発されるのだが、それは余談。
M4〜9は70年8月60万人が集まったワイト島フェスでのライヴ。ビッチェズ・ブリューの録音は終わり、W.ショーターがG.バーツと交替してバンドを去り、K.ジャレットとA.モレイラが参加。チックとキースの出す音が左右チャンネルに分離され、両者の丁々発止のやり取りが鮮明。こちらの録音はD.ホランドのベースがよく聴こえる。これも熱演。
マイルスのB.ブリュー録音の前後を飾る歴史的ライヴ。中山康樹氏の「マイルスの夏、1969」が参考になる。ショーターのおかしな遅刻の弁明も含めて。
1969マイルス
電化時代のマイルスのアルバムはライブも含めて2枚組が多く、疲労困憊の夜なんかには到底BGMになり得ない過激さが最大の売り。しかし、ともすれば冗長さに苦痛を感じることもしばしば、気が付いたらCDが一曲目に戻っていた、そんな経験がある人は少なくないのではあるまいか。そんな時には黙って本作を聴くのがよろしい。CD1枚に凝縮された電化マイルスの神髄を、たっぷり味わえること請け合いだ。
しかし全く、この強烈なサウンドがたった5人の手から生み出されたとは、何という密度の濃さだろう。それも35年前の録音!偉大なるカリスマの元に集った若き天才達の奇跡の結晶。もうマイルスの求心力には、改めて脱帽するしかないってもんでしょう。当時公式アルバムとして発表されていたら、その後のジャズとロックの歴史は確実に変わっていたんじゃなかろうか?それくらいに影響力を備えた作品だと信じて疑わない、疑えない。
ショーター、コリア、ホランドも才気とアドレナリン全開で、御大マイルスを煽る煽る。とりわけジャック・デジョネットの凶暴なドラミングは凄まじすぎて、聴く度に戦慄を禁じ得ないほどだ。これほどまでに高度な音楽性と過激な暴力性を同時に表現し尽くした音楽家なんて、当時のマイルス以外に誰が存在していただろうか?圧倒的に傑出していた天才達の所業に、こうして気軽に対峙できる時代に生きるって、何て幸せなんだろう。ああ、今回も聴き返してやっぱり感動してしまった。マイルスはビートルズを超越した、20世紀最高の音楽家かも知れませんね。