そっくりモグラの毛語録
中華人民共和国が台湾解放を訴える絵葉書をモチーフとしたそのジャケットがまずもって人の眼をひくこの Matching Mole の2枚目にして最後のアルバムは、Rock の人 Robert Wyatt の Jazz 演奏への欲望の高度の昂ぶりを、奇妙な緊張感を与えるプロデューサー Robert Fripp、そして、ゲストの Brian Eno が Wyatt の欲望を巧みに制御し、1作目に続き、またもや、素晴らしい化学反応による音楽化合物を創出、特に Wyatt の極めて巧妙なドラミングは驚異的、集中して聴くと戦慄を覚える程、しかしながら、バンドとしての総合的技量やバランスも極めて見事で、Rock の人 Wyatt の Jazz 欲が見事な迄に奇妙な果実として結した傑出の作品集。
March
デビューアルバム発表直後の72年3月(だからタイトルが「March」)にヨーロッパをツアーしたライブ音源。デビューアルバムからデイブ・シンクレアが抜け、ゲスト扱いであったデイブ・マクラエ(ニュークリアス)が全面的に参加しています。ほかのパーソネルは、ワイアット(ds.vo)、フィル・ミラー(g)、ビル・マコーミック(bs)。全体に非常にフリーキーな印象を与える演奏です。
いきなりワイアットのシンバル・ワーク。単調なベースにギター、キーボードが断片的にからむだけのほぼ「ドラム一色」から始まります。ときおりワイアットのボーカリゼーションを織り交ぜながら、ほぼシームレスに曲が流れていきます。フィル・ミラーのギターがとても的確ですね。ワイアットが、このメンバーに全幅の信頼を寄せていることが十分にわかる名演です。奇怪な曲が続くわりには暖かさを感じさせます。
ジャズ寄りの演奏でありながら、熱い「ロック魂」という言葉を持ち出したくなります。クールな演奏ではなく、お互い刺激し合うようなライブだから。最後の「ウォータールー・リリー」は、フィル・ミラー大活躍で、まるでハードロックです。
そっくりモグラ
72年発表の1st。ソフト・マシーンを脱退したロバート・ワイアット(Dr) が、元キャラバンのデイヴ・シンクレア(k)、元デリヴァリーのフィル・ミラー(g)、元クワイエット・サンのビル・マコーミック(b) と結成したグループ。ゲストでジャズ系のキーボード奏者のデイヴ・マックレエが参加している。本作はワイアットが脱退する前のソフト・マシーンをほぼ踏襲した内容を持っており、彼が関わった作品としては非常に分かりやすいものの一つである。4作目以降、非常にシリアスになっていったソフツ本家と初期の本家のユーモアを保った分家という位置付けで考えると分かりやすいし、それくらい本作は初期ソフツの雰囲気をそのまま伝えている。楽器編成が若干異なり、ピアノが主体になっているのとデイヴ・シンクレアのポップス的な要素がかなり加味されているため、ややソフツと違った印象を受けるかもしれないが、ソフツ本体がこういう音楽性へ変化した可能性を含めて非常に興味深い作品だと思う。またソフツよりも非常に聞きやすいのも特徴だ。
収録曲のほとんどは緩やかなインストによるジャズ・ロックだが、1.はあまりにも有名なヴォーカル曲。メロトロンのフルートとピアノ、簡素なパーカッションをバックにセンチメンタルなワイアットの歌声があまりにも印象的な名曲中の名曲だ。