日本の原発技術が世界を変える(祥伝社新書225)
・原子力発電は日本の電気エネルギーの30%を担っている。
・世界レベルで考えると短期的にはますます頼らざるを得ない状況なのは確か。
※原子力なしで今後の新興国の成長も背負うのは現状はでは無理。
・最近、韓国が政府・企業パッケージ化に成功して、個々の日本企業やセールスが負けている。
(それまではフランスと日本の専売特許のように売れていた。)
というぐらいは知っていて、実際の原子力については、よくわかっていなかった。
本書で徹底的に調査した内容には感服した。
原子力エネルギーの歴史、国ごとにどのような構造の原子力エネルギーが生まれたのかを細かに書いてくれています。
そして、現在の各国の原子力発電の状況。
日本が技術では負けていないのに、なぜ世界レベルの商業で勝ちきれないのか?などを言及しています。
何よりも面白かったのは、実際に原子力発電所に出向き、現地の人々と発電所側の取材している部分だった。
原発はほかの発電と比較してリスキーであるのも事実。
だが、原発を抜いた場合、代替エネルギーはあるのだろうか。
ない段階では、闇雲に反対しても仕方がない。一つでも知っていくことが大事なのではないだろうか。
(仮に日本が廃止して生活レベルを落とす方向で進んでも、韓国・フランスは原発需要に応えていくだろうし、アメリカの老朽化した原発や中国の新規発注などで需要は増える一方である。いずれにしても勉強しなければならない。)
なんとなく買ってしまった本なのだが、著者はSF作家が本業。
読んでいく途中で気づいて、「えー!畑違いじゃないか?」と思ったが、
圧倒した取材力と検証力に魅かれて勢いで読みきった。
自分も原子力発電所に見学に行ってみたい気持ちになった。
歴史から消された邪馬台国の謎 (プレイブックス・インテリジェンス)
私は邪馬台国論争について詳しい訳でないが、本書で新鮮に感じたのは、魏と倭だけに焦点を絞らず、魏志東夷伝に登場する他の民族との比較を行いながら、北東アジア史の流れの中で、魏と倭の関係を読み解こうとしている点である。東夷伝に登場する諸民族のうち、最も多くのページが割かれてるのが倭人であることや、「楽浪海中、倭人あり。」を「楽浪郡とその海の向こうに倭人がいた」と解釈出来ることからは、著者ならではとも言える北東アジア像が見えてくる。
世界史の中の石見銀山(祥伝社新書202) (祥伝社新書 202)
よく見ると私のレビューはいつも、は★1つか、4か5のどちらかが多い。自分の極端な性格を表しているようだ(笑
しかしこの本には★3つつけた。中間の評価だ。その理由をこれから述べる。
まず石見銀山に関する本は少ないように思う。ましてや新書で石見銀山を語った本となると寡聞にして聞かない。そういう意味で待望の本と言っていい。
著者豊田は本書において、石見銀山の繁栄をスペインによるポルトガル併合と結び付ける、新たな視点を提示する。
これが★2つ減らした理由なのだ。豊田はポルトガル・スペイン国家連合をポルトガルの亡国ととらえ、「国を喪ったポルトガル人の悲劇」として描くのだが、史実はどうだったのか? 大航海時代の両国の合同は、両国の主に経済界の要請。つまりお互いの勢力圏への相互進出の利益という理由で、両国民から歓迎されたものではなかったか。
豊田の視点は、いささか強引すぎるというものだろう。
しかしながら、その強引さを認めたうえで・・・、この本はなかなか読ませるのだ。
豊田はもともと作家だ。その作家の才能が、ポルトガル亡国の悲劇という「フィクション」を読ませる物語にしている。これが★3つの理由だ。
豊田の説には賛成できない。しかしこの歴史フィクションはなかなか読ませてくれる。これで★3つとした。