武士の家計簿(初回限定生産2枚組) [DVD]
かつて「家族ゲーム」で、現代日本の中流家庭を鋭い視点から描いてみせた森田芳光監督。原作は、データベースのような学術書だそうです。そこから、その行間を読み、ハートウォーミングなストーリーをつむいでみせたアイデアと力量はさすがだと思います。
御算用者とは、いわば経理担当の事務職。そこには世間一般の考える武士道の凛々しさはないが、自分の仕事と能力に確固たるプライドを持つ主人公の姿は、不安な時代を生きる現代人にも通じるものがあります。
まず主人公の下級武士・猪山直之の“武器”が、刀ではなく算盤(そろばん)というのがいい。激動の時代・幕末を、会計能力で生き抜く彼は、現代のサラリーマンのよう。ただし、この主人公には、見栄や世間体を重んじる武家社会にあって、どんなにみっともないマネをしてでも、絶対に家族を守り抜くとの決意があった。幸いにも、一芸に秀でたことが、藩の時流と時代の流れに合致。結果的に直之の正直な生き方が、猪山家存続への扉を開く。地味で堅実、そして真摯な生き方が報われる物語は気持ちがいい。
ただし、物語は淡々と進み、盛り上がりに欠ける感はどうしてもしてしまいます。
印象的なエピソードが多いですが、直之が、息子の着袴の祝いに、高価な祝い鯛が買えず“絵鯛”で代用するエピソードや、御飯、魚、副菜2品、味噌汁の『一汁三菜』だったのが、一汁一菜にせざるを得ない中で、鱈の白子の酢醤油や身を昆布締めにして翌日に食べたりして、おいしく長く食べる工夫をするエピソード、等々。切実かつユーモラスな場面が、やはり秀逸。それから直之が妻のお駒にプレゼントした櫛のエピソードも忘れ難いですね。
こういう映画を見ると、いま世の中には、親子間でのけじめ、礼儀、継承がちゃんとなされているのかと、思い直してしまいます。
文・堺雅人
なんとなく ハニカミの笑顔の背景
(彼の笑顔は 満面の笑顔でなく いつもハニカんで見える)
最終回ツーアウトランナーなし
だれも僕にヒットを期待してないし、僕だってそうだ。
僕が打席に立つ時は「敗北の儀式」みたいになっていた。
・・・・ 略 ・・・・
こんな子供の頃の出来事を『 型 』というタイトルで表している。
そして終わりの言葉が
” おとなになるのもわるくないもんだ ”
こんなエッセーが書かれてます。
こんな 感性の豊な本
彼の俳優としての演技が ” なるほど ”
そして ” この人はプロだ! ” と 納得する本です。
堺雅人ファンは こころの 1ページに ・・。
南極料理人 [DVD]
「人間が生物として・・・」「男達と家族・・・」「自分と他者は・・・」
とか何とか言って無理やりテーマを設定してレビューを書いてみようと思いました。
でもやめました。
この映画は、とにかく、観ている時間が楽しいんです。
好きなシーンもそうでないシーンも様々ですが、全体として観ていて楽しい。
笑いだって、ここに書いてしまえば、「料理をこぼしました」「拾って食べました」ってなるし、
感動だって、「家族を想います」ってなります。
こうやって説明しても、何も可笑しくないし、感動もしませんよね。
一度、観てみてください。
武士の家計簿(初回限定生産2枚組) [Blu-ray]
江戸中期より商人がめきめきと台頭し、将軍家は元より全国津々浦々の大名家が火の車であった江戸後期、陪臣も当然のように尻に火がついていた。そんな中のある武士の家庭を描いている。
現代でいうところの会計士にあたる主人公は家の負債を減らすべく、恥も外聞も捨て爪に火をともす生活を家族に強いる。それでも武士としての最低限の心構えだけは捨てない。わが子への厳しい教育、親子の確執、夫婦愛、そしてあらたな時代への変革の波が押し寄せる。
激動の時代を通して、家族の在り方に心打たれる傑作だ。