仮借なき明日 (集英社文庫)
‘92年の作品だということにまず驚いた。
出てくる小道具が古いので‥。
単行本ではもっと前の作品なのだろう。
わたしは、この改訂新版で初めて出会った。
しかし、佐々木譲ファンならとうに読んでおられるだろうが、
わたしは三冊ほどしか拝読していないので、ともかく驚いた。
面白い!!
解説によれば本書は、ダシールハメットの「血の収穫」の優れて
見事な本歌どりなのだそうだ。
そういえばマカロニ・ウェスタンのように、人がバタバタ死んでゆく。
再びファンの方には失礼かも知れないが、わたしの読んだ著者の作品の
中ではイチオシだ。
巡査の休日 (ハルキ文庫 さ 9-5)
道警シリーズも4作目。映画化がきっかけとはいえ、短期間で夢中になって4作読みました。佐々木譲さんの警察小説は、どれも素晴らしいと思います。残念ながら、警察小説以外を読んだ事はないのですが。
今回は、レビューのタイトルにも書いたセリフが印象的でした。本編中にある警官が言うセリフです。「キャリアどもが何をやっていようと、おれたちはくさらず、自棄にならず、まっすぐ自分の仕事をしような」そこには、諦めざるを得ない悔しさと、ほんの少しの希望を求める男達の願いが込められている気がします。警官の正義があるように感じました。
本編は、前作で小島百合が逮捕した鎌田が病院から逃亡。ストーカー被害者の村瀬香里の元に、差出人不明のメールが届く。鎌田からの可能性があることから、小島は再び警護につく。津久井は鎌田の行方を追う。
今回、佐伯の出番は非常に少ない。自分は道警シリーズといえば佐伯が主人公と思って読んでいたので、かなり残念。それで★4つ。しかし、内容としては面白かった。ラストも悪くない。
さらば愛しき大地 (レンタル専用版) [DVD]
都会化が進む農村地を背景に、自分の思惑とは裏腹に、果てしなく堕ちていく男の哀れさと自暴自棄さを、堂々かつ悠然に、圧倒的な映像力で照射させた柳町光男の紛れもない大傑作。その当時の日本映画の本流とも言える反社会的で、重い、暗い、激しいの3要素で貫徹されたへビィな作品だが、観終わった後のドスンと残る感覚は、心を捉えて離さない。小川紳介と同伴して長年“三里塚”の農村と人々を撮り続け、この年(82年)「ニッポン国古屋敷村」で山形の牧野村での“日常”を活写させて絶賛された田村正毅による撮影が素晴らしい。劇中何度もインサートされる風にそよぐ田園の緑々さ、唐突にふたりの幼子を飲み込む水面の水波の静的で恐怖のイメージ、それに続く葬列の人々と日食、覚醒剤でトリップするドモリの蟹江敬三と彼の妻で片足をひきずっている中島葵、山口美也子と小林捻持による豚小屋での性交シーン、秋吉久美子の歌う「ひとり上手」、覚醒剤を打ち続け、陶酔と破滅に陥っていく根津甚八等、一分の隙もない凝縮された画面から発せられる各場面が極めて印象的だ。根津演じる主人公を、甘い、弱い、暴力的と断罪するのは容易いが、それに内包される“悲しみ”を感じてしまう部分もある。根津を始め、蟹江、山口、矢吹二朗と皆忘れられない好演だが、何と言っても秋吉久美子!!彼女の演じる順子の、そのあまりの哀切さは、泣き顔で歌われた音程の狂った「ひとり上手」と共に、愛おしくていつまでも胸に残る。
警官の紋章 (ハルキ文庫)
道警シリーズの三作目。期待を裏切らない内容で納得したが、ある意味シリーズ1作目から読まないとシリーズの展開がわかりにくい部分もあり、単品としての作品とは別に連作物の難しさ、限界が出てきたなと直感。裏金問題、大麻取引と腐敗した警察組織を再生したい主人公達と、様変わりしない警察組織の暗躍然とした闇の部分を大枠にし展開する物語の展開は、とにかく面白い。但し、レベルが高い作品だけに、今後のこのシリーズの盛り上がりに期待してしまう。