人道的介入―正義の武力行使はあるか (岩波新書)
初めて本書を読んだときには、問題なく素晴らしい本であると感じ、著者の見解に全面的に同意したのですが、改めて読み直すと、著者の国連中心主義的な見解に関して、多少気になる部分が出てきました。以下、それに対する批判を少し述べさせて頂きます。
私自身は著者のように、国連を神聖化した見解は持ちませんが、これをとやかく言う気はありません。ただし、著者が表面的には国連重視を訴えながら、その都度過去の事例で国連を批判する姿勢は気になります。例えばまずソマリアについて。著者はソマリアで、明白な人権蹂躙は起きていなかったと考えているようですが、実際には現地を牛耳るアイディード将軍は、国連からの援助物資を強奪し、敵対勢力(非戦闘員も含む)を飢餓や病気で苦しめるために使いました。だからこそ国連は武力介入せざるを得なくなったというのが実状ですが、こうした武装勢力の非道に対して、著者からの言及はありません。ベトナムのカンボジア介入に関しても同様で、国連が批判したのは、カンボジア介入そのものではなく、むしろその後のベトナムによるカンボジアの支配です。ポルポト派の駆逐自体は、素晴らしい行為ですし、私自身も大いに評価します。しかし問題なのは、その後20年近くカンボジアを占拠し、共産主義体制をカンボジアに押し付け、政治の中枢からカンボジア人を締め出したこと、反対派を処刑したこと、さらには国連の人道機関さえも、カンボジア国内から締め出したことです。この行為がなければ、ベトナムの介入は大いに評価されたはずですし、ベトナム自身も経済制裁で最貧国に転落することもなかったでしょう。
以上批判的なことを書きましたが、ベンガル問題、ユーゴ問題などに関する丁寧な議論はおおむね評価できます。国際貢献について考えるに当たって、読んでおいて損はない1冊だと思います。
NSC国家安全保障会議―危機管理・安保政策統合メカニズムの比較研究
政府の司令塔である大統領府・首相府の国家戦略の最高意思決定機関の解説書。
本家のアメリカだけでなく、英国や中国・韓国など各国の制度を網羅しています。
一般の人にはなじみはありませんが、アメリカのドラマ「ザ・ホワイトハウス」「24」。映画では「13ディズ」でよく出てくる機関ですね。
NSCに関する書籍は日本では初めてです。ネットで調べても詳しく載っていないので、著者と出版社に感謝します。
国際政治・行政の危機管理システムに関心のある人と大学生は読んでくれると思いますが、国会議員には是非読んでほしいと思います。
日本では安保会議の改正が進んでいないので・・・