セブン・イヤーズ・イン・チベット〈ニューマスター版〉 [DVD]
本作品はハインリヒ・ハラーの著書「チベットの7年」がもとになっている。ハラーはドイツ隊の一員として、ヒマラヤの魔の山・ナンガパルバットに遠征した。そして下山したところをイギリス軍につかまる。ちょうど第二次大戦がおきたときだったからである。
映画は、ハラーが収容所を脱出してチベットにのがれ、中国がチベットを侵略するまでを描いている。この映画はプロパガンダが目的ではないだろうが、チベットで何が起きたか、あらためて世界に知らしめた。欧米ではチベット侵略の実情は、本作品ではじめて明らかになったというわけではなく、当初からよく知れわたっているという。
ハラーはオーストリアの人で、あのアイガー北壁をはじめて完登した一流の登山家であり、ダライ・ラマの勉強相手をつとめたという数奇な体験の持ち主である。前半にものたりないところもあるけれど、ダライ・ラマの少年やラサの光景など、美しい場面も多く、やはり必見の映画ではないだろうか。
レイプ・オブ・チベット―中華的民族浄化作戦 (晋遊舎ブラック新書 11)
タイトルは扇動的ですが、
内容は現在手にしうるチベット争乱関係本の中でも、
出色のできばえ。
2007年10月から時系列で、チベット内の争乱を
淡々と客観的に記録している。
3月14日の争乱が単なる暴発ではなく、
時間を掛けて澱のように積み重なっていった、
チベット人による不満の爆発と、
死の覚悟を決めた決起だったということがよくわかる。
チベット問題のドキュメントであるからには、
決して楽しくも心躍ることもなく、ただただ悲しく、
切なく残酷で、目を背けたくなる内容なのだけど。
それでもなお立ち上がったチベット人の魂の記録であり、
根底に流れる調べは崇高ですらある。
チベット支援者は全員、歴史書として持っておいた方が
いいと思うので5つ星。
20年後の歴史の検証に役立つこと間違いなし。
セブン・イヤーズ・イン・チベット―チベットの7年 (角川文庫ソフィア)
死のクレバス〜運命を分けたザイル〜運命を分けたザイル2〜アイガー北壁〜新白い蜘蛛の繋がりで読みました。
前半は収容所の生活から脱走、失敗、脱走、チベットへの逃走です。
民族誌をベースにした冒険活劇と言ったところでしょうか。
後半はラサに辿り着いてからのある意味サクセスストーリーです。
以前ダライラマのチベット我が祖国を読み始めましたが、何か鼻につき、途中で読むのを止めました。
ですので本書に書かれたことが、どこまで民族誌として読んでよいのか分かりませんが、とても面白いです。
独立国家としてのチベットが消滅した現在ではチベット最期の貴重な記録です。
映画程意図が見えませんし、ダライ・ラマが巻頭にメッセージを寄せていますので、大きな歪曲はないと思います。
只不思議なのはダライ・ラマが25歳の時に書いた「チベット我が祖国」にはハラーとアウフシュナイターは全く出てこなかったことです。
(私の記憶では)
それなのに、ダライ・ラマが50歳を過ぎて書き起こした「自伝」には登場しているようです。
この25年間の世論、政治情勢の変化の所為でしょうか。
ネガティブチェックのようで気が引けますが、ハインリッヒ・ハラーの死亡記事には
元ナチ党員でアイガー北壁発登頂者という肩書きがつきました。
それらをひっくるめても、冒険活劇としても、民族誌としても、近代国家史としても、読む価値のある一冊です。
しかし、ハラーが新編白い蜘蛛でザイルパートナーと評したナンガ・パルパット遠征隊長ペーター・アウフシュナイターがかたくなに沈黙を通したことが気になります。
次にはハラー三冊目の書籍「石器時代への旅―秘境ニューギニアを探る」を読んでみようと思います。