花伝書(風姿花伝) (講談社文庫 古 15-1)
日本の重要古典で、タイトルくらいは誰でも知っている
「初心忘るべからず」「秘すれば花」など
人口に膾炙している有名フレーズも含まれている
本文は文庫で80ページほどだが、
全文原典でちゃんと読んでいる人はそう多くはない
和関連の習い事を始めたとか
きっかけがあった時に、
ぜひ手にとって読んでみるべき
この文庫は、本文の下に丁寧な語注がある
それでも意味がよくわからない時は
後半に収められている
平易でこなれた現代語訳を読めばいい
(表紙はちょっとこわいけど)
「さりながら、この花は真の花にはあらず。ただ時分の花なり」
「指をさして人に笑はるるとも、それをばかえりみず・・」
「ここにて捨つれば、そのまま能は止まるべし」
処世術は世阿弥に学べ! (岩波アクティブ新書)
本書を読むと、意外な歴史的事実に驚かされます。能は、もとは舞台芸術と言うよりは、大衆芸能的な存在であったこと、従い、世阿弥には、芸術家としての取り澄ました態度はなく、ただ勝つこと、観客という存在を対象とした人気の争いにのみ関心があったのだと著者は言います。そういった観客との関係、人気との関係、組織との関係などの関係性の中で、世阿弥は、芸の道、更には生きる道を説いたのだと捉えられており、そうだとするならば、「処世術」というタイトルはまさにそれに相応しく、内面に沈潜する類いの人生論の趣きとはやや毛色を異にします。
実際に本書は三つの狙いに成功しています。先ずは、タイトル通り、世阿弥の残した数々の言葉から、「処世術」を学ぶことが一つ。また、著者も言うように、能あるいは世阿弥への理解を深めることが二つ目。そして、古典と言われるものを、あらためて読んでみたくなる気にさせることが三つ目。読みやすいように、さらりと書き流されていますが、ここでの処世術には著者ならではの洞察が溢れた、味わい深い一冊です。